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「暴力の連鎖 断ち切る」 広島で講演 パレスチナ出身の医師

 2009年のイスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの攻撃で、娘3人とめいを失ったパレスチナ人の産婦人科医イゼルディン・アブエライシュさん(62)の講演会が29日、広島市中区の広島国際会議場であった。悲しい経験を語る一方で「私は憎まない決意をした。相手を許すことは本当の勇気だ」と述べ、暴力の負の連鎖を断ち切る大切さを訴えた。

 アブエライシュさんはガザの難民キャンプの出身。家族を亡くした当時はイスラエルの病院に勤めていた。現在はカナダ在住で、トロント大の准教授を務める傍ら、世界各地で講演を続けている。

 講演では罪のない子どもや女性が犠牲となる戦争について「人類にとっての喪失」と強調。「戦争の苦しみから抜け出す唯一の方法が教育を受けることだった」と自身の経験を紹介し、教育の充実による女性指導者の育成が重要と説いた。

 広島は初の訪問。この日は中区の原爆慰霊碑に献花し原爆資料館を見学した。講演後の会見で「広島は原爆の惨禍から粘り強く再起した。世界のリーダーたちには頻繁に訪れてほしい」と話した。講演会は、広島市の教育関係者たちでつくる実行委員会が主催し、約630人が来場した。(菊本孟)

(2017年10月30日朝刊掲載)

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