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下蒲刈島民「誇らしい」 朝鮮通信使「世界の記憶」 祝賀タペストリーや看板

 「朝鮮通信使に関する記録」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録されたのを受け、絵巻物を所蔵する呉市下蒲刈島の松濤(しょうとう)園は31日早速、登録を祝うタペストリーや看板を掲げた。島内外で喜びの声が相次いだ。(今井裕希、見田崇志、益田里穂)

 松濤園は、登録された資料の中で唯一、瀬戸内海を航行する通信使船団を描いた長さ8メートルの絵巻物「朝鮮人来朝覚備前御馳走船行烈図(ごちそうせんぎょうれつず)」がある。タペストリーは縦2・5メートル、横1・7メートルで、絵巻物の写真を刷り込んでいる。実物は館内で来年1月29日まで展示。近く説明用のパンフレットも配るなど、登録の祝賀ムードを盛り上げる。

 今年秋、松濤園で絵巻物を見た雲南市加茂町の家具製造、渡部満善さん(75)は「当時の朝鮮王朝の繁栄ぶりがうかがえる貴重な資料。人や物を運ぶ交流に海路が重宝されていた様子もよく分かる」と見入っていた。

 瀬戸内海航路の要衝として栄えていた下蒲刈島。通信使が12回来日したうち、11回立ち寄った。下蒲刈町三之瀬の山本忠自治会長は「島の歴史が世界に認められて誇らしい。島がにぎわう」と喜ぶ。島を挙げて歓待した様子を再現する朝鮮通信使再現行列を毎年主催する朝鮮通信使行列保存会の菅原広三会長は「再現行列の価値も上がる。市全体で盛り上げる機運がさらに高まる」と期待する。

 31日は、市役所やJR呉駅などにも横断幕や懸垂幕が掲げられた。小村和年市長は「昨年4月の日本遺産登録に続いて、市特有の歴史に関心が高まっている。ゆかりの市町や団体と連携を図り、にぎわい創出に努める」とコメントした。

 日韓友好の歴史はいまも息づく。2016年2月に発足した市日韓親善協会の八代一成会長は「これで呉市が世界に知られる。韓国を含めて海外から多くの人に訪れてほしい」と夢を膨らませる。在日本大韓民国民団(民団)呉支部の白正美(ペク・チョンミ)元支団長(70)も「歴史に学ぶ人が増えれば、現代の両国の友好も一層深まる」と喜んでいた。

(2017年11月1日朝刊掲載)

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