×

ニュース

鞆歓迎 継承決意新た 朝鮮通信使「世界の記憶」 対潮楼で副総領事ら乾杯

 福山市鞆町などにある江戸時代の外交資料「朝鮮通信使に関する記録」が、「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録された31日、市は、通信使の高官が宿泊した同町の国史跡、福禅寺対潮楼で祝賀イベントを開いた。住民や観光客も歓迎した。(衣川圭)

 イベントは、枝広直幹市長や駐広島韓国総領事館の李載雄(イ・ジェウン)副総領事たちがくす玉を割り、通信使も味わった保命酒で乾杯した。

 同市からの登録は、通信使が鞆の景色をたたえた大書「日東第一形勝」や、通信使の漢詩をまとめた巻物「韓客詞花」など福禅寺所蔵の6点。同寺住職の山川龍舟さん(68)は「先人が残した貴重な資料を、後世にしっかりと引き継ぎたい」と決意を新たにした。

 枝広市長は「鞆の文化的価値を飛躍的に押し上げる決定になった。日韓両国の共通の財産としてしっかり守っていく」と喜んだ。鞆町内会連絡協議会の大浜憲司会長(69)は「300年前の文化交流が現在に花開いた。まちづくりに生かしたい」と話した。

 李副総領事は「朝鮮通信使の縁地の交流や観光が盛んになってほしい」と期待した。東京都板橋区の会社員小田島淳也さん(43)は、通信使も見た対潮楼からの眺望を楽しんだ。「この景色は心が落ち着く。登録を生かして観光が活性化すればいいですね」

 同町の鞆の浦歴史民俗資料館では特別展「朝鮮通信使が見た鞆の浦」を開催中で、福禅寺所蔵の登録資料の実物が見られる。19日まで。

福禅寺墨書2点 修復と複製作製 福山市検討

 福山市は、「世界の記憶」に登録された福禅寺(同市鞆町)所蔵の資料のうち「日東第一形勝」と「対潮楼」の2点の墨書の修復と、レプリカ作製を検討している。

 1711年と48年の通信使が紙に書いた両墨書は、当初、壁にびょう留めされていたとみられ、虫食いや色あせが目立つ。修復費は200万円余りとみられる。市は、修復費の半額を補助する方針で、来年度予算への計上を視野に入れる。

 福禅寺も修復費の募金を開始。近く、クラウドファンディングも始める。

(2017年11月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ