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瀬戸内沿岸 喜びの声 鞆や呉 「努力実った」 朝鮮通信使

 日本と韓国にある江戸時代の外交資料「朝鮮通信使に関する記録」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)の登録が決まった31日、朝鮮通信使が寄港し、登録資料が残る瀬戸内海沿岸の関係者から喜びの声が上がった。日韓友好への期待も膨らんだ。

 呉市下蒲刈町の松濤(しょうとう)園は、通信使の船団を描いた絵巻物「朝鮮人来朝覚備前御馳走(ごちそう)船行烈図」を所蔵。運営を担う蘭島文化振興財団の竹内滝法副理事長(57)は「再現行列などで通信使の継承をしてきた努力が実った。島にある資料が世界に認められたことは名誉だ。観光客が増え島も活性化する」と喜ぶ。

 通信使高官が書いた墨書「日東第一形勝」「対潮楼」などが残る福山市鞆町。鞆の浦朝鮮通信使研究会の戸田和吉代表(66)は「地元での通信使研究が登録に結びついた。通信使がもたらした文化的なものから学ぶと同時に、大切に残してきた先人の思いも引き継ぎたい」と力を込めた。

 山口県上関町に残る絵図「朝鮮通信使船上関来航図」も登録資料の一つ。古文書解析などを続ける町民団体「かみのせき郷土史学習にんじゃ隊」事務局の井上美登里さん(64)は、「これまでの作業が報われた。国境を越えて文化がつながった気がする。この歴史を未来の子どもに引き継いでいきたい」と歓迎した。

 各地の通信使関連のイベントに出向いてきた駐広島韓国総領事館の徐張恩(ソ・ジャンウン)総領事は「待ち望んでいた登録でうれしい。歴史認識などを巡り、日韓関係は長らく複雑化していたが、登録が両国の新たな一歩につながる」と期待した。

(2017年11月1日朝刊掲載)

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