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朝鮮通信使 「世界の記憶」 上野三碑も 慰安婦 判断延期

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は31日、歴史的文書などを対象とする「世界の記憶」(世界記憶遺産)に、瀬戸内海沿岸ともゆかりが深い江戸時代の外交資料「朝鮮通信使に関する記録」を登録したと発表した。日本と韓国の団体が共同申請していた。日本からは他に、群馬県の古代石碑群「上野三碑(こうずけさんぴ)」も登録した。

 日本からの登録は計7件となった。朝鮮通信使の登録名には、「17世紀~19世紀の日韓間の平和構築と文化交流の歴史」との副題が付く。日本の朝鮮通信使縁地連絡協議会と韓国の釜山文化財団が登録に向けた活動を進め、江戸時代の友好の歴史に光を当てた。

 朝鮮通信使は、朝鮮国王が徳川将軍家に派遣した外交使節団。江戸時代の1607~1811年に計12回、来日した。ソウルを出発した一行は、釜山から海路で対馬(長崎県)や瀬戸内海を通って大阪まで航行。江戸に向かった。

 寄港地や宿場では日本の学者や医師たちが面会し、学問や文化を学んだ。一行が通った地域には外交文書や行列の様子を描いた絵などが残る。日本側は12都府県にある209点、韓国側は124点、計333点を登録申請した。

 中国地方関連は計41点。呉市と山口県上関町にある船団や寄港の様子を描いた絵、山口市にある通信使の進物の目録、福山市鞆町で通信使が景色をたたえた「日東第一形勝」の大書など。中国地方に所在する資料の世界の記憶登録は初めてとなる。

 一方、上野三碑は飛鳥、奈良時代(7、8世紀)に現在の群馬県高崎市に建てられ、東アジアの文化交流を示す遺産として同市などが申請していた。

 第2次大戦中に「命のビザ」で多くのユダヤ人難民を救った岐阜県出身の外交官杉原千畝の資料「杉原リスト」は、登録が見送られた。中国や韓国などの民間団体が申請した旧日本軍の従軍慰安婦関連資料は、是非の判断が延期された。

 「世界の記憶」は歴史的な文書や絵画などを保護し、共有する目的で登録。2年に1度審査をする。

(2017年11月1日朝刊掲載)

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