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核廃絶主導へ器量を 国連決議案 松井市長 政府に苦言

 国連総会第1委員会(軍縮)で日本主導の核兵器廃絶決議案への賛成が昨年より23カ国減った結果について、広島市の松井一実市長は1日の記者会見で「非常に残念」と語った。核保有国と非保有国との「橋渡し役」を果たしきれない政府に対し「核兵器のない世界に向けた取り組みを誠実に前進させるため、国際社会をリードする器量を持ってほしい」と苦言を呈した。

 核兵器禁止条約に直接触れず、非人道性を巡る表現も後退するなどした決議案の採決で賛成が減り、棄権も10カ国増えた点を松井市長は指摘。「今度の決議案が多くの方にどう受け止められたか明白ではないか」と述べた。

 「器量」がなければ、段階的な核軍縮を唱える保有国と、禁止条約を推進する非保有国の橋渡しをできないと強調。既存の核拡散防止条約(NPT)と包括的核実験禁止条約(CTBT)に基づく取り組みの必要性に理解を示しつつ、「禁止条約の締結促進のための共通基盤は追求していただきたい。積極的外交を展開してほしい」と求めた。(岡田浩平)

「核軍縮に関与 決議案の目的」 外相

 河野太郎外相は1日、国連総会第1委員会(軍縮)が採択した日本主導の核兵器廃絶決議案への賛成国が昨年より23減ったことについて「目的は賛成国を増やすことではなく、核兵器保有国を再び核軍縮にコミット(関与)させることだった」と述べ、保有国の一部が賛成に転じた成果を強調した。

 同日の記者会見で、保有国では米国に加え、昨年棄権した英国とフランスが決議案に賛成し、米、英両国は共同提案国にもなったと説明。それが「当初の目的に沿った結果だ」と述べた。「核兵器禁止条約を支持する相当数の国が賛成票を投じてくれたのもいいことだ」との認識を示した。

 決議案は禁止条約に触れず、非人道性に関する表現も昨年より後退。144カ国の賛成多数で採択されたが、昨年は賛成した禁止条約推進国の一部は棄権に回った。

 一方、同委員会は、加盟国に対して禁止条約を早期に署名、批准するよう促す決議案を賛成118、反対39、棄権11で採択したが、日本は反対した。河野氏は「理想を掲げ、核軍縮に対する認識を広める条約の役割は認めるが、われわれのアプローチは違う。(日本は)一歩一歩、現実的に歩みを進めていく」と述べた。

(2017年11月2日朝刊掲載)

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