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社説・コラム

『美術散歩』 被爆建物に多様な表現

◎ヒロシマ・アート・ドキュメント2017 8日まで。広島市中区袋町、旧日本銀行広島支店

 国内外の作家が広島から現代美術を発信する展覧会。24回目のことしは3カ国から3人と2組が参加し、被爆建物に多様な表現を展開している。

 ドミニク・パスカリーニ(フランス)の「巨大 火の玉」は、地下の一室に赤い電球がともる。壁や天井を赤く染め、あの日の広島を思い起こさせる。床面には人が横たわる姿などを輪郭だけで描いた。1枚の畳も置かれ、作者自ら身を横たえるパフォーマンスも繰り広げた。

 ベロニク・ジュマール(同)は風船で椅子をつり上げたインスタレーション「飛行物体」を出展。夢をはらむようで軽快だ。フランスからは、もう1組が参加している。

 日本の2人組ユニット「バイパーウエアー」は、映像作品「7つの文字と7つの言葉」。スクリーンに爆発や銃撃の場面が次々に現れ、字幕によるメッセージとともに鑑賞者の心を揺さぶる。

 ラジオを使ったヤングジェ・リー(韓国)の作品は、会場周辺で拾った街の音が鳴り続ける。その余韻は、被爆前にもあった人々の暮らしを想起させる。=敬称略(上杉智己)

(2017年11月3日朝刊掲載)

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