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聖母像 ヒロシマ安置 世界平和記念聖堂に在日バチカン大使館寄贈

伝承ゆかり 信者ら歓迎

 広島市中区の世界平和記念聖堂に、在日バチカン大使館から聖母マリアの像が寄贈された。マリアが羊飼いの前に降り立ち、第2次大戦の開戦などの預言を託したとされる「ファティマの聖母出現」から100周年を迎え、「大戦で原爆被害を受けたヒロシマで安置してほしい」と大使館が企画した。カトリック教会が「奇跡」と認めた伝承にゆかりがある像を、被爆地の信者は歓迎している。(門脇正樹)

 カトリック広島司教区によると、マリアは1917年5月13日~10月13日に計6回、ポルトガル中部の小都市ファティマに現れ、第1次大戦の終結と第2次大戦の開戦、教皇銃撃などを預言したと伝わる。ローマ法王(教皇)庁は30年、この伝承を「奇跡」として公認。ファティマは巡礼地となり、現地の大聖堂には、石こう製のマリア像がまつられている。

レプリカの1体

 世界平和記念聖堂に届いたのは、この石こう像と同型の木像で、高さ約1・3メートル。白いベールと王冠をかぶり、祈るように手を合わせている。5月13日にファティマであった聖母出現100周年記念ミサに合わせ、各国の信徒の寄付金で作られたレプリカ像のうちの1体だ。

 レプリカ像には、各地で平和への祈りを広げる役割があり、ジョセフ・チェノットゥ駐日バチカン大使(74)が「マリアが預言した大戦で、人類初の核兵器被害に遭ったヒロシマの聖堂に贈り、世界平和への祈りに役立ててもらいたい」と発案。広島司教区の白浜満司教(55)が快諾した。5月以降、東京や大阪、長崎などの教区を巡回し、10月24日に世界平和記念聖堂に到着した。

 翌25日に聖堂であった記念ミサには、国内の司教や司祭、信徒たち約350人が参列した。チェノットゥ大使が「ファティマの聖母像がヒロシマに到着し、荘厳なミサがささげられることを喜んでいる」とする教皇のメッセージを代読。白浜司教は「ヒロシマの信者にとって大きな喜び。マリアと共に真の平和への道を歩みたい」と述べた。

教皇に来秋謁見

 レプリカ像は現在、広島司教区が管轄する中国地方の教会を巡回中で、来年5月13日に同聖堂に安置される。これまであったマリア像は、別の教会へ移設される予定。

 広島司教区は来年10月、バチカンに30人規模の巡礼団を派遣し、教皇に謁見(えっけん)してメッセージへの感謝の気持ちを伝える。その後、ファティマへ向かい、現地のミサに参列する。

 巡礼団を率いる白浜司教は「米国と北朝鮮の緊張が高まるいま、世界で最初の被爆地となったヒロシマの司教区に、平和を願う象徴である聖母マリアが届いた意味は大きい。平和の使途としての使命を胸に刻み、活動を強めたい」と話している。

(2017年11月6日朝刊掲載)

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