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原発事故後 被爆2世組織広がる活動 全国で発足相次ぐ

 被爆2世の活動が全国で活発化している。地方組織が相次ぎ発足し、日本被団協と連携する動きも生まれている。被爆の記憶と核兵器廃絶の訴えを継承したいと関わりを深め始めた2世たち。背景には、被爆者の高齢化に加え、東京電力福島第1原発事故により、あらためて増大した放射線による健康被害への不安があるようだ。(岡田浩平)

 京都府の被爆2世たちは20日、「被爆2世・3世の会」を設立する。事前の問い合わせ状況などから20人以上の参加を見込む。世話役の平信行さん(61)=京都市南区=は「被爆者の高齢化もあり、私たちが被爆体験を引き継ぎ伝えたい。2世ならではの苦しみも訴えたい」と話す。

 長崎県では5月に長崎、諫早両市でそれぞれ「二世の会」ができた。長崎原爆被災者協議会と連携しての運動を計画する。東京都内では被爆者団体の一般社団法人東友会が声を掛け、4月から2世の会合を3回開催。会設立を目指している。

 2世組織は1988年にできた労組中心の「全国被爆二世団体連絡協議会」(二世協)などがあるが、近年、地域の会が自主的に生まれている。

 日本被団協が昨秋、44都道府県にある地方組織に聞いたところ、2世の会・支部が約4分の1に当たる12組織にあり、設立希望は14組織あった。広島県では二つある被団協とも会がある。九州ではメーリングリストでの情報交換が活発化している。

 日本被団協は先月、被爆者と2世でつくる委員会を初めて設け、運動継承の道を模索し始めた。ただ、被爆者が少ない東北や北陸地方では親の世代の会の運営を担ってほしいとの思いもある。

 加速する2世の組織づくり。原発事故が一因とするのは、長崎被災協事務局次長で2世の柿田富美枝さん(59)=長崎市。「仕事や子育てを終え、親の願いを受け継ごうと思っていたところに、福島の事故で放射線の怖さを再認識した」と言う。

 厚生労働省の2世施策は年1回の健康診断のみ。「研究で遺伝的影響は認められていない」ことが理由だ。被団協によると、東京都と静岡県が、がん検診を、東京都、神奈川県などが一部の病気について医療費助成をしている。今後、中高年にさしかかり、健康不安を解消する施策の充実を求める声が全国的に強まりそうだ。

 その一端として、5日、国や政党への被団協の要請活動に2世も参加し、がん検診の導入を求めた。広島県被団協(坪井直理事長)理事で2世の田口正行さん(55)=三次市=は「全国で2世がまとまり、粘り強く要望を続けたい」。核兵器廃絶と援護策充実を求めて闘ってきた被爆者の後を継ぐ「使命」をにじませている。

(2012年10月16日朝刊掲載)

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