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ラムネ通じ平和紙芝居 市民グループ、安佐北区の工場題材 戦死の父継いだ山田さん

 広島市安佐北区安佐町のラムネ工場の歴史を題材に、平和について問いかける紙芝居を、安佐南区の市民グループ「待っとる間に鶴折る会・ヒロシマ」が作った。戦争で経営者を失い、苦労を強いられた実話を通じ、平和の大切さを考えてほしいと訴えている。(山田英和)

 タイトルは「山のラムネのものがたり」。安佐町小河内にある山田飲料工業所の経営者山田義春さん(80)にグループ代表の豊久芳光さん(52)=安佐南区緑井=が取材し、13枚の紙芝居にまとめた。

 山田さんの父で創業者の洋造さんは軍が召集。山田さんが生まれて半年余りが過ぎた1938年4月に中国で戦死した。山田さんは、母が引き継いでいた家業を16歳で任され、高校で勉学に励みながらラムネの製造や配達に奔走して生き抜いたという。

 紙芝居の中で山田さんは自身の体験を広島弁で語る。戦時中にラムネが嗜好(しこう)品として製造を禁じられ、機械を供出したことも紹介。物語は「ラムネは時代が変わって珍しくて懐かしいものになったが、戦争は今でも世界で続いている」「みんなの目や耳で、本当に平和なのか考えてみて」と結ばれる。

 完成した作品を見て、山田さんは「おやじがおらずに辛苦した。戦争はいろいろな人の人生を狂わせた。わしらみたいな思いをする者が出ちゃいけん」と訴える。

 豊久さんは「戦争にたくさんの人が巻き込まれたことを子どもたちに知ってもらいたい」と願う。市立中央図書館、市立こども図書館、安佐南区図書館に1部ずつ寄贈し、学校での読み聞かせ会なども考えている。

(2017年11月9日朝刊掲載

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