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米海兵隊岩国基地への移転条件 「艦載機空域」調整進まず

 米海兵隊岩国基地(岩国市)への米空母艦載機などの移転条件の一つである訓練空域の調整が進んでいない。国と米軍は訓練空域を広げたいが、中四国地方の陸と海の上空に「空白」がないからだ。移転完了の目標年の2014年まで2年余り。米軍の空域確保の優先で、民間機の安全や利便性が損なわれる恐れもある。

 米軍・自衛隊の訓練空域は、広さや高度を定め、中国地方を含む全国各地に設定されている。民間の航空路や訓練空域と重複するケースもあるが、使用する高度に差をつけ、双方の安全を確保。このため民間機の飛行は制限を受ける。

 在日米軍再編計画では、岩国基地へは米海軍厚木基地(神奈川県綾瀬市など)から空母艦載機59機が移転。1996年の日米特別行動委員会(SACO)の合意で、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)からはKC130空中給油機12機が移転する予定になっている。

 国土交通省空域調整整備室によると、既存の民間航空路や軍用・民間用訓練空域で、すでにいっぱいなのが現状。同室は「空域の拡大や新設は難しい」と認める。艦載機移転に伴い訓練空域を確保したい国と米軍。今後、空の過密状態の中で訓練空域の設定が優先されれば、民間機の高度や航空路がこれまで以上に制限、変更され、安全性や利便性に影響が出かねない。

 航空評論家の鍛治壮一さんは「軍用訓練空域の拡大が優先され、民間の空路や空域が影響を受ける可能性は十分にある。騒音が増大することも忘れてはならない」と話している。(編集委員・山本浩司)

(2012年10月17日朝刊掲載)

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