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文集で伝える 戦争の記憶 神崎小 卒業生と元教員製作

 広島市中区の神崎小の卒業生と元教員が、原爆による校舎全壊から学校再開までの5年間に焦点を当てた文集「語ることあり」を作った。仲間や教え子を失った無念さ、通い慣れた学校を卒業できなかった心残りがつづられている。

 同校は爆心地から約1・2キロ。約1860人の全校児童のうち約8割は疎開しており、残っていた児童と教員約150人が亡くなった。生き残った児童は校舎再建の1950年まで、別の学校で学んだ。

 文集はA4判、90ページ。28人の手記を収めた。41年入学の女性は、転校先での心細かった日々を振り返り「神崎小の卒業証書をいただきたかった」と記した。元校長の男性は「子どもたちを返せ」と訴えている。当時1年生だった漫画家中沢啓治さん(73)のインタビューも収めた。

 これまでも関係者から昔を語る手記が多く寄せられ、一部は折々の記念冊子などに載せてきた。昨年、卒業生有志たちが、もっと多くの手記を紹介しようと文集製作を決めた。

 500部印刷し、うち約200部を中区の市立中央図書館などに寄贈した。残りは希望者に無料配布する。卒業生で製作メンバーの正本良忠さん(80)=西区=は「戦争の記憶の風化が進む中、平和学習にも役立てばうれしい」と願っている。(教蓮孝匡)

(2012年10月18日朝刊掲載)

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