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「中国残留邦人」後世に 厚労省 広島でも証言撮影

 第2次世界大戦末期の混乱で旧満州(中国東北部)に残され、その後に帰国した中国残留邦人の証言を映像に収める作業が17日、広島市南区の中国・四国中国帰国者支援・交流センターで始まった。厚生労働省が全国で進める事業の一環で、記録した体験談や苦労話を基に、地域との交流や平和学習に活用する。中国地方では初めての収録で、12月末までに広島市の3人を撮影する。(栾暁雨)

 この日は重山厚さん(82)=中区=が証言した。鳥取市出身で、満蒙(まんもう)開拓団として1941年、一家で現在の黒竜江省に入植。93年に帰国した。「自分の体験を広く知ってほしい」と収録に応じた。

 終戦直後の逃避行で家族と離死別し、中国人の養父母に引き取られた経緯や、周囲に日本人だと知られないよう転居を繰り返した体験などを紹介。帰国後は、言葉の壁と生活習慣の違いに直面したという。「戦争が家族を引き裂き、私の人生を変えた。この歴史を忘れないでほしい」と訴えた。

 厚労省は、残留邦人の高齢化を踏まえ、今年1月に収録を始めた。2019年3月までに全国で約60人を撮影する計画。1人30分程度に編集し、同省のホームページ(HP)で順次公開する。DVDも作成し、全国7カ所にある中国帰国者支援・交流センターで貸し出す。

 中国地方には、国の支援給付金を受ける残留邦人が231人いる。広島の166人が最も多く、岡山40人、山口15人、島根6人、鳥取4人。厚労省は「家族を含めると人数はさらに多い。生の声を通じて歴史や現状を伝え、社会の理解を深めたい」としている。

(2017年11月18日朝刊掲載)

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