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車両確保へ バス協初参加 原発30キロ圏防災訓練 事故時の調達 疑問の声

 中国電力島根原発(松江市鹿島町)の事故を想定し、県が原発30キロ圏の鳥取県、両県の6市などと17日に始めた原子力防災訓練。住民避難に必要な車両確保へバス協会との連絡訓練を初めてするなど、民間企業が入った取り組みもあった。一方、実際の事故時に無事に避難できるかなど、参加した住民からは課題の指摘もあった。(秋吉正哉、小林正明、口元惇矢)

 「島根原発で事故が発生し、住民避難の可能性があります。バスの確保は可能ですか」―。訓練開始直後の県庁講堂では、県職員5人が4月に島根、鳥取県と住民の輸送支援の協定を結んだ中国地方5県のバス協会との連絡、調整に当たった。

 約1時間の訓練では全協会が対応可能と回答。県内の34バス事業者に問い合わせ、167台を調達する見通しがついた。だが、放射性物質の放出や地震発生もあった場合、必要な場所にバスが到着できるかは未知数。県原子力防災対策室の伊藤徹室長は「訓練の課題を検証し、対策の充実に努める」とした。

銀行も情報共有

 民間企業では、山陰合同銀行(松江市)が県と事故のシナリオを共有した訓練をした。連絡を受け、本店に緊急対策本部を設置。原発5~10キロ圏の支店など8店舗、10~30キロ圏の29店舗に閉鎖や帰宅の準備を伝えた。

 米子支店(米子市)にあるBCP(業務継続計画)対策室では、経営企画部の行員4人が備品などを確認。経営政策グループの阿川弘司グループ長は「お客さまや職員の安全、資産の保全が何より大事。初動をいかにスムーズにできるかが重要」と話した。

陸自隊員が搬送

 原発が立地する鹿島町では、住民の緊急避難訓練などがあった。佐太、手結地区の計91人が鹿島武道館など3カ所の一時集結所へ。武代地区では自力での避難が難しい人の家まで車を近づけられないと想定し、陸上自衛隊出雲駐屯地の隊員が、要支援者役の松江市職員を約200メートル離れた自衛隊の救急車まで担架で運んだ。

 参加した鹿島町佐陀宮内の井山隆さん(64)は「訓練を重ねることは大切だが、すぐにバスを確保できるのか、病気やけがをしている人はきちんと避難できるのか。課題はあると思う」と話した。

(2017年11月18日朝刊掲載)

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