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緊急時退避に不安の声 原発30キロ圏防災訓練 バス長距離移動 疲労も

 中国電力島根原発(松江市鹿島町)の事故に備え、島根県が原発30キロ圏の鳥取県や両県6市と19日に開いた原子力防災訓練。昨年に続き、緊急速報メールの配信や放射性物質の検査などをした。一部の地域でメールの配信遅れが出るなど、住民や観光客からは不安の声も上がった。

緊急速報メール

 原発30キロ圏の6市では、午前8時半ごろ、訓練上の避難指示を呼び掛けるメールが配信された。松江市の松江城を観光で訪れていた大阪市の会社員伊藤達哉さん(33)は「知らない土地だと、メールが届いてもどうしたらいいか不安」と話した。

 県が「緊急時の情報伝達に有効な手段の一つ」と位置付ける速報メール。古い機種には技術上配信できないという。今回、出雲市の配信が一部、30分程度遅れるトラブルも発生。市の配信操作ミスが原因だとしている。

 同市上岡田町の農業三島正一さん(70)は10年以上使う携帯電話にメールが来なかった。「配信が遅れたり届かなかったりするのはおかしい」と指摘した。

スクリーニング

 松江、出雲、雲南市の住民計約350人は、バスで出雲市長浜町の県立東部高等技術校へ避難し、放射性物質が付着していないか調べるスクリーニングの訓練に臨んだ。県職員らがバスのワイパーやタイヤなどの放射線量を測定。汚染が疑われると想定した住民は、検査と放射性物質を取り除く作業を受けた。

 鳥取県では、大型商業施設で初めて、避難退域時検査をした。米子、境港市の住民計約250人が乗ったバス12台がイオンモール日吉津(日吉津村)駐車場に着くと、県職員らが車体の放射線量を測定。陸上自衛隊米子駐屯地の隊員がテント内で除染作業をした。

広域避難

 出雲市でスクリーニングを受けた住民が、益田市、邑南町へ移動する訓練もあった。同町健康センター「元気館」に設けられた避難所には、バス2台に乗った松江市白潟地区の43人が出発から約4時間かけて到着。避難者名簿記入の手順などを確認した。

 同地区連合町内会の今井隆良会長(78)は「長い道中で疲れた住民も多かった。事故が起こった際は、風向きがどうなっているかなど車内での情報提供も必要」と求めた。

(2017年11月20日朝刊掲載)

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