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核なき世界への鍵 前進のために <2> 核の役割低減

先制不使用 日本も声を

 核・ミサイル開発を進める北朝鮮へ、「圧力」をかけ続ける日米両政府。緊張が増していた8月、広島県が広島市内で開いた核軍縮を巡る国際会議「ひろしまラウンドテーブル」の議長声明は、米国に対し、北朝鮮を核で先制攻撃するという選択肢は「不道徳で不賢明」として検討対象自体から外すよう迫った。日本には、「核の先制不使用」政策を普遍的に受け入れるよう提案している。

 会議には米中日韓など7カ国の専門家たち16人が参加。「米日韓の高度に発達した通常兵器」による報復をちらつかせるだけで抑止効果があるとの分析も背景にあるが、藤原帰一・東京大教授(国際政治学)が議長を務めてまとめた声明は、核兵器に頼らない安全保障の検討が基調にある。

 相手国の核攻撃がない限り核を使わないと、保有国が先制不使用を宣言すれば、核抑止の役割は他国の核使用に対してに限られる。全ての保有国が採用、順守すれば理論上、核は使えなくなる。核兵器禁止条約の言う「完全不使用」へ不十分ながら近づくと言える。

 オバマ米大統領(当時)が昨年5月に広島を訪問後、採用を検討中と米紙が報道。「半歩前進」(日本被団協)との期待が広がった。県は賛意を伝える書簡をホワイトハウスに送り後押しを試みた。

 しかし、採用は見送りに。「核の傘」を求める日韓を念頭にケリー国務長官(当時)たちが反対したとされる。

 少なくとも日本政府は「核以外の攻撃に対し、米国の核の報復を望まない」との姿勢を示していない。例えば、2014年4月25日の衆院外務委員会。当時の岸田文雄外相は、米国は「米国や同盟国の死活的利益を防衛すべき極限状況下においてのみ核兵器を使用するということを検討している」と述べ、「わが国の考え方と一致」と述べた。

 その上で、北朝鮮などからの「通常兵器または生物化学兵器による攻撃を抑止する役割を依然として担う」とも言及。「極限」なら米国に核先制使用の検討を望み、仮に北朝鮮などが核放棄しても米国の核に頼るとも解せる。

 質問した自民党の河野太郎氏は「先制不使用も宣言をしない。被爆国として、核の重要性を下げるようなことを何一つやっていない」と批判した。質問から3年余りが経過した今年8月、河野氏は後任の外相に就任した。ただ、「重要性を下げる」動きは見えない。現在の北朝鮮情勢を踏まえ、「生物化学兵器への抑止が弱まる」との反対も専門家の間に一部ある。

 先制不使用は、法で規制されない政治宣言にとどまる限り、信用性が課題。ラウンドテーブルの議長声明は、今も各千発近くがすぐに発射できる態勢にあるとされる米ロを念頭に、「警戒即発射態勢の核の大幅削減」で相互信頼を築くようにも求めた。

 「保有国や核に依存する国が禁止条約より段階的核軍縮が効果があるというなら、まずその具体的道筋を示し、取り組むことが条約推進国との溝を埋めることにつながる」と県平和推進プロジェクト・チーム。27、28両日に「賢人会議」を開く外務省に声明文書を届けている。(水川恭輔)

(2017年11月22日朝刊掲載)

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