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社説・コラム

『潮流』 10万年という歳月

■論説副主幹 宮崎智三

 46億年もの地球の歴史のうち77万~12万6千年前が「チバニアン(千葉時代)」と名付けられる可能性が高まってきたという。地質年代に日本関連の名称が付くのは初めてとなるから、何とも誇らしい。

 一方、「人の時代」という新たな区分を設けようとする話も国際学会で検討されているそうだ。原爆投下や核実験で出た放射性物質、化石燃料を燃やして出る炭素の微粒子、化学肥料に含まれる窒素やリン、氷床や氷河の中の二酸化炭素…。そんな痕跡が「人の時代」の特徴とはいえ、地球に対して申し訳ない気がする。

 また厄介なものを押しつけるのか―。そんな地球の怒りが聞こえてきそうだ。原発の燃えかす、核のごみを「地層処分」しようという政府の方針に対して、である。

 放射能レベルの極めて高い核のごみを、ガラスを混ぜて固めステンレス製容器に閉じ込め、地下300メートルより深い岩盤に埋める。10万年近く人々の生活圏から隔離する計画だ。

 地球レベルで考えれば短い時間だろう。でも人間にとっては途方もない歳月だ。10万年さかのぼれば、人類の祖先のホモ・サピエンスが生まれ故郷のアフリカを出て世界の隅々に広がったころらしい。そんな気の遠くなる時間を経ても処分場は大丈夫か。不安はなかなか消えまい。

 経済産業省などが広島で開いた処分場選定に関する市民との意見交換会をのぞいてみた。100人の枠を設けていたが、平日の昼間だからか50人だけ。年配の人が多かった。他の会場で広報業務を受託した業者が学生を動員しようと謝礼を持ち掛けたことが響いているのだろうか。

 大事な問題なのに関心は低く、国民的議論は起きそうにないのが残念だ。まずは立ち止まって、破綻した核燃料サイクルを続けるのか、国民は原発再稼働を求めているのか、から話し合う方が近道ではないか。

(2017年11月25日朝刊掲載)

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