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社説・コラム

社説 東海第2原発 40年廃炉が原則のはず

 日本原子力発電(原電)が、来年11月に運転開始から40年を迎える東海第2原発(茨城県東海村)の運転期間を20年延長すると原子力規制委員会に申請した。

 運転延長の申請は、関西電力の高浜原発1・2号機、美浜原発3号機に続き4基目となる。東海第2は、過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型である。再稼働の前提となる安全審査を受けている中国電力の島根原発2号機(松江市)も同じタイプだ。

 沸騰水型は、高浜原発などの加圧水型に比べて格納容器が小さく事故で冷却機能が失われると、内部の温度や圧力が上がりやすい欠点が指摘されている。その沸騰水型の原子炉としては初の延長計画となるだけに、なおさら慎重で入念な審査が欠かせない。

 福島の事故を教訓に、原子炉等規制法が改正され、原発の運転期間を原則40年とする規定が定められた。設備の老朽化でトラブルが増えるリスクが高まるからだ。規制委が認めれば、20年の運転延長が可能としたが、それはあくまで「例外中の例外」だったはずだ。

 にもかかわらず、3基の運転延長が既に認められた。原則40年廃炉のルールがなし崩し的に形骸化されることになれば、国民の不安は一層膨らむだろう。

 原発でつくった電気を大手電力会社に卸販売している原電の経営は福島の事故後、厳しい環境下にある。保有する3基の原発は全て停止している。うち1基は廃炉が決まり、もう1基は直下に活断層があると指摘され、再稼働が難しい状況だ。

 収益改善と事業継続のために、東海第2の「延命」と再稼働を目指す道しか残っていなかったのかもしれない。しかし本来は「例外」であるはずの延命による再稼働である。乗り越えなければならない課題は多い。

 まず地元の不安とどう向き合うかが問われる。東海第2は関東地方にある唯一の原発で、30キロ圏内に約96万人が暮らす。万一の事故に直面した時、素早く避難できるかどうか疑問だ。事故に備えた避難計画の策定も、受け入れ先の自治体との調整が進まず、滞ったままだ。これほど大規模な避難想定自体に無理があるのではないか。

 再稼働に対する地元同意も不透明だ。影響を受ける人口の多さから、東海村と水戸市など30キロ圏内の周辺5市は原電に対して、再稼働の事前了解などの権限を、県と東海村に限定せず、周辺自治体まで広げるよう求めている。

 今のところ原電は難色を示し、話し合いは進んでいない。不安を抱く地元の声に耳を傾ける努力を示さなければ、経営優先との批判は免れないはずだ。

 安全対策費は、当初計画から2倍以上に膨らみ、約1800億円かかる見通しだ。自前の原発が停止し、大手電力会社から得る原発維持のための基本料金が頼みの綱だ。辛うじて経営を維持しているのが実情で財務余力はない。確実に資金調達できるか注視することが不可欠だ。

 リスクが大きく、事故時には国内最多となる周辺住民に影響が及ぶ。費用対効果にも疑問が残る。それでも、40年の原則を曲げてまで運転する必要があるのか。原電には丁寧な説明が求められる。

(2017年11月28日朝刊掲載)

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