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被爆者の叫びに国際社会が共鳴 核禁止条約議長ホワイト氏 軍縮会議で広島入り

 7月に核兵器禁止条約を制定した国連の交渉会議で議長を務めた、コスタリカのエレイン・ホワイト駐ジュネーブ国際機関代表部大使が29日、広島市中区の広島国際会議場で中国新聞などのインタビューに応じた。国連軍縮会議出席のため初めて訪れた広島で、条約の実現に被爆者が果たした役割を高く評価した。(聞き手は金崎由美)

 核兵器禁止条約が122カ国の賛成により採択され、非政府組織(NGO)核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))がノーベル平和賞を受賞するなど、今年はまさに特別な年だ。

 広島と長崎、そして一般的に日本は、核兵器なき世界という目標におけるシンボル的存在。交渉会議で条文の最終案を提示した際、私は「国際社会が被爆者の叫びに耳を傾け、核兵器の違法化に合意した」とのメッセージを発した。

 禁止条約は、既にある核拡散防止条約(NPT)などの軍縮・不拡散体制を強化する法的な規範だ。しかも、強力で包括的な禁止を盛り込む。同時に、締約国会議で追加的な措置を検討できるなど、柔軟性も持ち合わせる。加えて、被爆者や市民社会、政府の対話を通じて生まれたという意味で進歩的な条約だ。

 現在、全ての国に条約署名と早期の批准を促している。ただクラスター弾禁止条約などの前例などから、現実には発効まで2、3年かかるのではないか。

 国際的な緊張が高まっているからこそ、冷戦期の核軍拡競争の思考に戻ってはならない。北朝鮮のミサイル発射と核開発は、禁止条約の機運に水を差すどころか、核時代という現状を乗り越える必要性を一層証明している。

 軍隊をなくし、国際法と国連憲章に自国の安全保障を委ねるコスタリカの人間として思うのは、日本の体験は被爆者と家族だけのものでないということ。核被害は、意図的な使用や勘違い、誤使用を問わずどこでも起き、人類消滅の危険もある。条約採択後の機運の中で、日本に期待される役割はたくさんある。(談)

(2017年11月30日朝刊掲載)

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