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核非合法化声明 日本拒否 長崎市長が再考要請 広島市長は慎重姿勢

 核兵器の使用を国際法上非合法化する努力を各国に求めて30カ国以上が合同で発表した声明に日本政府が署名を拒否したのを受け、広島市の松井一実市長は24日、政府に再考を促すことに慎重な姿勢を示した。長崎市長は外務省を直接訪れて署名するよう求める要請をした。二つの被爆地の対応の違いに、広島の被爆者団体から疑問の声が上がる。

 松井市長はこの日の記者会見で、声明について「日本政府が提唱してきた核軍縮と理念が一致する。絶対悪である核兵器を廃絶するべきだという被爆地広島の訴えと重なる」と評価した。声明に名を連ねた国々と連携を強化するよう政府に求めていくとした。

 ただ、署名するよう求める政府への具体的な要請活動については、長崎市の田上富久市長が19日に外務省を訪ねたことに触れ「要請の様子を詳しく聞き、対応を考える」と述べるにとどまった。

 今回の声明に政府が賛同しなかったのは、米国の「核の傘」への影響を懸念したためだ。政府への要請活動に慎重な背景として、松井市長は「抑止力論で価値基準が違う政府に、平和を希求する広島としてどこまで言うかは、自分としても悩ましい」との考えを明らかにした。

 広島の被爆者は、市の姿勢に不満の声を上げる。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧智之(みまき・としゆき)事務局長(70)=北広島町=は「政府に遠慮する必要はない。広島市が率先して被爆者の声を代弁し、強く要望するべきだ」と注文する。

 もう一つの県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長(72)=広島市西区=も「市の対応は『核の傘』に依存する国の姿勢を容認しているのと同じこと。残念だ」と話している。(田中美千子)

(2012年10月25日朝刊掲載)

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