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広電被爆電車 歴史や体験談 ビジュアルブック刊行

 広島電鉄(広島市中区)の被爆した路面電車の歴史や、当時運行に携わった人たちの体験談を、豊富な写真やイラストとともに記録したビジュアルブック「被爆電車75年の旅」が刊行された。

 広島電鉄の路面電車は、原爆投下から3日後の1945年8月9日に一部区間で運行を再開した。本書では、75年前の42年に製造され、今も現役で走る3両の「被爆電車」を誕生からたどり、運転台や車体裏の構造なども詳しく図解している。

 戦争で不足した乗務員を補う目的を帯び、同社が43年、現南区に開校した家政女学校の生徒だった3人へのインタビューでは、車掌や運転士を務めた思い出や路面電車への愛着がつづられている。

 また、運転士として勤務中に被爆した祖母の証言を基に、一女性が「さすらいのカナブン」の名で執筆、インターネットに公開した漫画「原爆に遭った少女の話」も収録。戦後の広島を撮り続けた故明田弘司さんたちの写真からは、いつも身近に路面電車があった市民の暮らしの活気が伝わる。

 被爆電車が現存することを知った東京のフリーライター小野塚謙太さん(43)が企画、取材した。小野塚さんは「路面電車の歴史を通して、惨禍に立ち向かった人たちの信念や街の発展が見えてくる」と話す。

 A4判、136ページ。ザメディアジョンプレス刊。2700円。(鈴木大介)

(2017年12月5日朝刊掲載)

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