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社説・コラム

社説 核兵器廃絶と日本 保有国説得 全力尽くせ

 国連総会の本会議できのう、日本が1994年から毎年提案している核兵器廃絶決議案が採択された。ほぼ右肩上がりが続いていた賛成国は前年より11少ない156にとどまった。共同提案国の数だと32も下回った。

 「唯一の被爆国」という看板への信頼が薄らいでいる証しだろう。自らの姿勢が問われていることを、日本政府は重く受け止める必要がある。

 7月に採択された核兵器禁止条約に参加していないだけではなく、決議案では言及を避けていた。核兵器の非人道性を指摘する表現も前年より後退した。そんな点が賛成国の減少につながったのではないか。

 広島市内で先週開かれた核軍縮を巡る二つの国際会議でも、日本が被爆国として果たすべき役割について、現状への批判や注文が相次いだ。各国の外交官や専門家が議論した外務省の「賢人会議」第1回会合と、国連軍縮会議である。とりわけ、禁止条約に対する消極的な姿勢への批判が目立った。

 核実験やミサイル発射の強行を繰り返す北朝鮮の問題や、米国への配慮があるにせよ、日本はずっと背を向け続けるつもりなのだろうか。核兵器のない世界を求める国際社会のうねりは高まっている。米国にばかり目を向けて、大局観を失っていないか疑問だ。

 核保有国も、核なき世界の実現という目標には賛成しているものの、禁止条約に対して反発や懸念を持っているのは確かだろう。非保有国との溝も深まっている。

 偶発的なミスから核兵器が使用される恐れや、核物質がテロリストの手に渡る危険はゼロとは言えない。当たり前ではあるが、核による被害が起きないようにするには、核兵器をなくすしかないはずだ。

 言葉だけで終わらせず、核なき世界へ一歩でも進むよう保有国を全力で説得し後押しすることが日本には求められている。段階的な取り組みが現実的というのであれば、具体的な道筋をどう描くのか。保有国と一緒に考え、行動していくことでこそ、橋渡し役を果たせるはずだ。

 核兵器禁止条約ができても、核拡散防止条約(NPT)の重要性は変わらない。保有国に核軍縮への誠実な交渉を義務付けている上、定期的な議論の場が確保されているからだ。

 その枠組みを核廃絶への道筋づくりに生かせないか。例えば持たない国を攻撃しない、先制使用はしない。核兵器を使わせない方策を考え、法的な縛りを持たせて約束させる―。保有国が真剣に取り組んでこなかったことから始める場にしたい。

 一方で、北朝鮮の非核化も急がれる。きのう国連事務次長のフェルトマン政治局長が首都の平壌に到着した。何より避けるべきは武力行使である。ましてや核兵器の使用など、とんでもない。米国との間で高まった緊張を緩和して、話し合いによる解決の糸口を探ってほしい。

 「ほかの誰にも同じ苦しみを味わわせたくない」。核兵器がいかに非人道的かを身をもって知る被爆者が願い、訴えてきたことだ。特定の国や人にとっての安全ではなく、人類全体が安心できる世界の実現が欠かせないとの考えが、根底にあるのだろう。そのためにこそ、日本は力を尽くすべきである。

(2017年12月6日朝刊掲載)

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