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上関原発計画 高まる関心 周辺市町 相次ぐ講演会/反対派に新団体

不透明な国策 地元は苦悩

 中国電力の上関原発建設計画がある上関町の周辺市町で、原発を巡る動きが活発化している。エネルギーに関する講演会が相次いで開かれ、反対派は新たな団体が発足。東京電力福島第1原発事故後、関心は周囲でも高まり、上関町民を側面支援する格好だ。一方で当の地元は推進、反対両派とも国策の不透明さに気をもんでいる。(堀晋也)

 「先見の明がある」。小泉純一郎元首相は周南市で11月6日、福島原発事故前から上関原発の反対を貫く住民をこう表した。自身が推進から反対に転じた経緯などを語った講演は、上関周辺で反対運動を続ける団体でつくる実行委員会が主催した。

新調査を危惧

 その団体の一つ「上関原発のない未来を!柳井地域の会」は10月に発足。中川隆志・柳井市議(66)が代表を務め、同市や田布施、平生両町の議員や住民が役員に名を連ねる。会員は約120人。原発は立地自治体周辺への影響も少なくない。6月末の中電の新たなボーリング調査開始などで、中川代表たちは危機感を募らせ、設立に向けて動きだしたという。

 同会は10月に柳井市で、反原発を訴える俳優の中村敦夫さんを招いた朗読劇を開催。原発建設予定地にほど近い祝島へ中村さんを案内した。島の60代女性は「勇気をもらった。計画から35年だが、まだまだ闘い続ける」。中川代表は「町民の負担は大きい。支援できれば」。今月16日には別の団体が宇部市に中村さんを招く。

 福島原発の事故後、県内の多くの市町議会が上関原発の計画中止や凍結を求める意見書案を可決した。対照的に県議会は1年前、原子力政策の推進を国に求める意見書案を可決。ことし10月の衆院選でも山口2区では、原発の必要性を主張する岸信夫氏が大差で当選。推進派は原発政策の進展に期待する。

 原発への理解を深める立場では、中国5県の商工会議所でつくる中国地域エネルギーフォーラム(広島市中区)が、上関町周辺などで講演を続ける。1月に柳井市と光市で開催。タレントのケント・ギルバートさんや俳優石原良純さんが、自然エネルギーとともに原発の必要性などを説いた。同フォーラムは年明けにも講演会を開く予定だ。

国の見解問う

 地元の上関町では、国が見直し中のエネルギー基本計画に原発新増設が盛り込まれるかは不透明で、原発の準備工事も中断している。人口減や少子高齢化は輪を掛けて進む。

 推進、反対両派の町議全9人は11月27日に初めて一緒に、国の見解を問う狙いで資源エネルギー庁を訪れた。西哲夫議長は「衰退する町の現状を伝えた。上関のため、賛否を超えて動いた」と話す。

 町議会は来年2月に選挙を控える。現在は推進7人、反対2人、欠員1。反対派は現職1人が立候補を見送る意向だが元職や新人が準備し、推進派は現職の他にも擁立を模索。両派の構成に大きな変化はない見通しだ。

 疲弊する町の将来を左右する国策の見通しは立たず、住民たちは苦悩の出口が見えないままでいる。

(2017年12月8日朝刊掲載)

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