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[イワクニ 地域と米軍基地] 信頼を重視 事前非公表 3日連続で時間外運用

「直接連絡」受け岩国市 他自治体は公開も

 米軍機の時間外運用を巡り、岩国市が岩国基地から通報された離着陸情報を要請に基づき非公表とする事態が続いている。米軍が地元へ直接伝える仕組みは珍しく、市は「信頼関係の重視」を強調する。一方、他県では国を通じて事前連絡を受けた場合、市民向けにホームページ(HP)や防災メールですぐに公表する例もある。自治体と基地の情報提供体制を整理した。

 中国新聞の調べでは、主要な航空部隊がある六つの在日米軍基地のうち、岩国以外に、米軍と地元自治体が時間外運用の「直接通報」を定めている例はない。滑走路運用時間などの取り決めも「岩国日米協議会」のようなローカルルールではなく、国と在日米軍司令部でつくる「日米合同委員会」での合意事項として正式に決めている。

 岩国以外でも、防衛省を通じて訓練に伴う時間外運用の事前連絡が入るケースはある。11月29日、米軍横田基地(東京)を抱える東京都福生市に対し、国から事前連絡があり、12月4~8日の米韓両軍の共同訓練への参加予定も伝えられた。市は説明内容を翌11月30日、市HPに掲載した。

 同市は「全ての米軍情報は市民に公開するスタンス。市に連絡があれば隠すことはない」とする。

 米空軍と航空自衛隊が共同使用する三沢基地(青森県)のある三沢市も「訓練に伴う時間外運用や空自の夜間飛行訓練は、国から事前連絡がある」と説明。同市では、市防災メールでこれらの飛行情報を市民向けに事前提供している。

 空母艦載機の岩国移転が進む厚木基地(神奈川県)。地元の大和、綾瀬両市では、艦載機が陸上空母離着陸訓練(FCLP)を実施する場合、日米両政府の「了解事項」に基づき、国を通じて事前通告がある。ただ、両市とも時間外運用の通報の取り決めはなく、大和市は「市の騒音測定器などで実態を把握するしかない」という。

 国内の米軍施設の7割が集中する沖縄県。普天間飛行場(同県宜野湾市)や嘉手納基地(同県嘉手納町など)も、時間外運用を含めて米軍が地元自治体に事前や事後に直接通報する仕組みはない。嘉手納町は「住民の問い合わせで基地側に事後確認しても『運用上の理由』で回答がない場合もある。岩国の例は聞いたことがない」とする。(和多正憲)

<米軍機の時間外運用の情報提供体制>

自治体(米軍基地) 情報提供体制
岩国市(岩国基地) 米軍が連絡。米側の意向で公表の有無を判断
青森県三沢市(三沢基地) 訓練であれば国が連絡。HPや防災メールで公表
東京都福生市(横田基地) 訓練であれば国が連絡。HPで公表
神奈川県大和、綾瀬市(厚木基地) なし
沖縄県宜野湾市(普天間飛行場) なし
沖縄県嘉手納町(嘉手納基地) なし

※横田、嘉手納基地は他の自治体にもまたがる

(2017年12月9日朝刊掲載)

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