×

ニュース

日本 今が立ち上がる時 ICANあす平和賞 日本被団協 坪井代表委員に聞く

被爆者の思い忘れるな

 核兵器禁止条約の制定を促した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))がノーベル平和賞を10日に受賞する。「核なき世界」への動きは原爆体験者の悲痛なまでの訴えから起こった。日本被団協代表委員で広島県被団協理事長の坪井直さん(92)に尋ねると、「日本よ、今こそ立ち上がれと言いたい」。体調を押してこう答えた。(西本雅実)

  ―ICANの受賞が決まった10月、「同じように行動してきたからうれしい」とコメントされました。
 われわれが亡き被爆者らと共に続けてきた核兵器廃絶の訴えを若い人らが受け止め、よう頑張ってくれた(ICAN発足は2007年)。インターネットも駆使して国際的に広げた活動に拍手します。ただ、被爆者がもらうのではない、うかれとっちゃあいけん。

  ―なぜ、ですか?
 政府は核保有国が参加する核拡散防止条約(NPT)のもとでの話し合いが重要だと言うが、これでは核を持つことを認めとる。廃絶にはならん。核兵器が約1万5千発に減った、まず「軍縮」だと唱えても、今日の1発は原爆の何百・何千倍もの威力がある。再び被爆者をつくるな!とあらためて声を大にしたい。

  ―日本被団協(1956年8月結成)の母体ともなった広島県被団協(同年5月)は今回、授賞式へ招待されていません。
 ICANは実は東京だけに相談して、(現在は代表委員2人のうちの)田中熙巳(てるみ)さんと(事務局次長の)藤森俊希さんの派遣が決まった。私は昨年5月のオバマ米大統領の広島訪問の折から歩くのがやっと。今は東京にもよう行けません。

 森滝市郎さん(94年に92歳で死去)ら被団協をつくった人たちは、援護を求めたのと一緒に苦しい生活の中で核実験禁止から訴えてきた。爆心地の約1・2キロで熱線を浴び私は、造血機能もやられた。今も続く貧血に襲われながら教師を続け、子どもらに原爆の恐ろしさを語った。それぞれの言い尽くせぬ思い、怒りが被爆者を奮い立たせ、運動を続ける力になった。広島を忘れとりゃあしませんか、という思いもある。

  ―ノルウェー・オスロへ行けたとしたら、どんなことを話したでしょうか。
 核廃絶であり同時に戦争をするな、と訴えます。人類を滅ぼすしかない核兵器をありがたがるのは、戦争を前提にするからだ。人類として知恵を絞り、戦争をなくする。米国も北朝鮮も核をもてあそんどる。原爆の惨禍を知る日本が立ち上がれと言いたい。被爆地広島がもっと声を上げる。黙っとったらおしまいです。

つぼい・すなお
 1945年、広島工専(広島大)3年の時に被爆。中学校長などを経て2000年日本被団協代表委員、04年県被団協理事長。広島市西区在住。

(2017年12月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ