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間接被曝の影響大きく 被爆者がんリスク研究 初期放射線量を上回る

 爆心地から約1・2~2キロで被爆した人の固形がんによる死亡危険度(リスク)のうち、初期放射線量の影響は最大で3分の1程度であることが、広島大原爆放射線医科学研究所(広島市南区、原医研)の研究で分かった。残留放射線や放射性降下物などによる間接被曝(ひばく)の方が、爆発時に浴びた放射線より影響が強かったと分析している。

 原医研の大滝慈教授たちのグループは、1970年1月1日に生存していた広島の直爆の被爆者2万7643人を2009年末まで追跡。爆心地からの距離別に、白血病を除く固形がんによる死亡危険度を計算した。

 それを基に建物などによる遮蔽(しゃへい)状況や、年齢、男女別などによる偏りを補正したリスクと、最大限に見積もった初期放射線による想定リスクを比較。その結果、初期放射線がリスクを高めた割合は最大で3分の1程度にとどまることが分かった。

 被爆者のリスクは、被爆した場所と爆心地との距離を基に、浴びた初期放射線の量を推定し、計算している。遮蔽状況が同じなら距離が遠くなればなるほど、リスクは下がる。

 しかし、今回の研究結果では、爆心地から約1・2~2キロでは、リスクはほとんど変わらなかった。

 また、爆心地から西方向で被爆した人の方が、東方向に比べ、リスクが少し高かった。大滝教授は、放射性物質を含んだちりや、「黒い雨」などの影響をより強く受けたためではないかと分析している。(宮崎智三)

(2012年10月29日朝刊掲載)

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