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連載・特集

[Peaceあすへのバトン] デザイナー 樅田裕美さん

インスタで祈り広げる

 画面いっぱいに並ぶたくさんの折り鶴。赤と白でデザインした専用の紙で折った画像を、写真共有アプリ「インスタグラム」で投稿してもらうよう呼び掛けています。

 国内外から知らない人たちが送ってくれた画像を見ると、平和を願う気持ちはみんな同じなのだと感じられ、うれしくなります。

 「広島86815プロジェクト」と名付けました。8月6日午前8時15分という日時を広く知ってもらい、それぞれの思いを表現できないか考え、7月から始めました。ハッシュタグを付け、アップしてもらった画像は200枚以上が集まりました。

 高校生の頃、CDのジャケットや雑誌のデザインに憧れて、この道に。自分と同じ、起業を目指すママたちの名刺やパンフレットなどをデザインする仕事をしています。

 平和への思いが募り始めたのは東京で過ごした学生時代でした。原爆への意識が自分と周囲とで大きく違うことに驚きました。ただ、その思いを表現する方法が分かりませんでした。

 社会人になって古里の広島に戻り、さらに母となって転機が訪れました。2010年に長女を出産し、祖母の自宅へ遊びに行った時でした。

 何気ない会話の中で、祖母が自分の被爆体験を初めて明かしてくれたのです。「今では想像できんほどよ」。家族を捜した時のことを、ためらいつつ振り返る姿を見て、自分も行動しなきゃという思いを強めました。

 その後、産んだ長男の子育ても落ち着いたことし、新たな一歩を踏み出しました。広島市立の小中学校で8月6日の登校日がなくなるのでは、というニュースを聞いて危機感を抱いたからです。

 平和の発信で、会員制交流サイト(SNS)は輪を広げる上で役立ちます。ただ祖父が月刊誌「映画手帖(てちょう)」の創刊に関わったと聞いていたこともあり、自分は紙の媒体にも愛着を持っています。そこで考えたのが、ヒロシマの祈りの象徴である折り鶴画像です。

 それも統一したデザインの紙で折り鶴を作れば、より多くの人に参加してもらえるのではないか。そう思って2、3日で構成を考え、呼び掛けを始めました。

 紙は持ち歩くことができ、無料なので手に取りやすい長所があります。「インスタ」が使えなくても参加できるよう、メールでの投稿も受け付けています。

 最終的には戦争や原爆に思いをはせつつ、未来を考える時間をつくってもらうことが目標です。日常のふとした時間や親子の遊びの中で、気軽に試してもらえたら。そんな夢を描いています。

 大人も子どもも夢を追い掛けられるのは、平和だからこそ。こんな時間がずっと続くよう願っています。(文・山本祐司、写真・山下悟史)

もみた・ひろみ
 広島市中区出身。井口高、東京の専門学校「バンタンデザイン研究所」卒。求人広告の企業を経て06年に広島の会社に移り、14年に独立。中区在住。「広島86815プロジェクト」では、ハッシュタグ「#広島86815」または「#hiroshima86815」を付けて画像を投稿する。専用サイトからも用紙をダウンロードできる。

(2017年12月12日朝刊掲載)

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