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ヒロシマの声 語る決意 元TBSアナ久保田さん 「伝承者」目指す

 皆実高(広島市南区)の卒業生で元TBSアナウンサーの久保田智子さん(40)が、広島市の被爆体験伝承者を目指している。現在は米国で暮らし、トランプ政権の核政策に危機感を持ったのがきっかけだ。ことし伝承者養成の講座に応募。今月、一時帰国して研修に初めて臨んだ。(山本祐司)

 11日に原爆資料館であった研修を終え、久保田さんは言う。「実感を持って伝えることが大切かな」。爆心地近くで被爆した女性の体験を伝えたいと考える。

 2000年のTBS入社後、人気の動物番組の司会や「NEWS23」などを担当。夫の赴任するニューヨークに移り住んだ後、この6月に同社を退社した。戦後70年を機に「戦争体験を聞く最後のチャンスでは」と思い始め、米コロンビア大大学院生として戦争体験の聞き取りに携わる。

 もともと「ヒロシマを語る資格はない」と思い込んでいた。自身は横浜市の生まれで中学、高校時代は東広島市に住んでいた。父は呉市出身だが身内に被爆者はいない。ただヒロシマという地名が知られる米国で暮らす中で、「失敗しても語ることに挑戦しよう」と思い直した。

 オバマ政権とは違い、核戦力の強化をうたうトランプ大統領。核抑止論を支持する米国人も多い。「核のボタンを押すストッパーになる被爆者の声が途絶えたら、どうなるのだろう」との不安が強まったという。

 核兵器禁止条約の制定、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のノーベル平和賞受賞を受け、久保田さんは「機運を盛り上げるのに、いま米国で話せたらよかった」とも残念がる。

 伝承者の活動は原則、広島市の原爆資料館で行われる。久保田さんは今後も帰国時に研修を受け、早くて20年春にデビューする。いずれ日本に戻る予定で、英語力を生かしてヒロシマの記憶を海外から被爆地を訪れる多くの人々に伝えたいと望む。

(2017年12月13日朝刊掲載)

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