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被爆者手帳 16日からから海外審査  広島市職員、釜山入り

■記者 森田裕美

 海外からの被爆者健康手帳申請を可能にした被爆者援護法改正に伴い、日本から海外に渡航して現地審査する初のケースとして、15日、広島市職員2人が韓国入りした。手帳を申請した在韓被爆者6人と、16日から面談を開始する。

 市原爆被害対策部の中村明己認定担当課長ら2人が、通訳とともに福岡空港から釜山市入り。韓国での申請窓口の1つである釜山の日本総領事館で、民辻秀逸総領事らと申請事務に関する課題などを協議した。

 面談は16日から19日までで、釜山やソウル、慶尚南道陜川郡で67-99歳の男性2人、女性4人の申請者と入院先や自宅で会い、被爆状況などを確認する。

 6人は来日すれば被爆者健康手帳に切り替えられる「被爆確認証」を既に所持しており、市は本人と確認でき次第、手帳の交付手続きに入る。

 中村課長は「被爆事実が確認できながら、渡日できず苦労されてきた方々にようやく手帳が渡せる。迅速な交付に努力したい」と話していた。

 【解説】昨年12月の改正援護法施行を受け、必要な場合には日本から海外に赴き、被爆者健康手帳交付に向けた審査をする制度の実際の運用が始まった。渡航には時間がかかり、被爆者側にも負担が大きいことから、状況に合わせて手続きの簡略化を求める声が上がっている。

 厚生労働省は新規の手帳申請だけでなく、被爆確認証を持っていても代理人による申請の場合は現地での本人面談審査が必要と規定する。職員の渡航費用は国が負担するものの、実務は広島、長崎両県市が担当することになった。

 在外被爆者の支援者の間には「代理申請の人は病状が深刻。海外にわざわざ出向く面談にさらに時間をかける必要があるのか」との声が強い。広島市も「一刻も早い交付のため問題点を厚労省と協議している。必要性の低い面談の省略など柔軟な対応も検討したい」とする。

 北米や南米、韓国の被爆者団体への聞き取りなどにより、4県市が見込む今後の海外からの手帳申請は新規で155人、確認証の所持者で32人。認知症などで被爆を証明できなかったり、必要な証人捜しが難しかったりする人も多い。韓国原爆被害者協会は「長年放置されてきた被爆者に対し、審査面で配慮が必要」と訴えている。

(2009年1月16日朝刊掲載)

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