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社説・コラム

社説 米軍ヘリの部品落下 普天間の運用停止急げ

 住宅地の真ん中に位置し「世界で最も危ない」基地といわれる、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の現実を改めて浮き彫りにした事故と言えよう。

 おととい、隣接する普天間第二小の上空を飛んでいた大型輸送ヘリコプターCH53Eの窓が外れ、校庭で体育の授業中だった児童約60人の近くに落ちた。

 外枠が金属製の窓は重さ約8キロで、落下の衝撃ではねた石が児童の腕に当たったという。一つ間違えば大惨事となっていた。日米合同で徹底した原因究明と再発防止を求めたい。

 「到底容認できない」と憤る翁長雄志(おなが・たけし)知事は菅義偉官房長官と早期に会談する予定だ。

 翁長知事はかねて基地協議で政府がのぞかせる「上から目線」や、その場しのぎの態度に不信感を抱いている。政府から米軍への形ばかりの抗議だけでは知事も納得するまい。

 今回の事故に「またか」の思いが普天間周辺住民にもある。つい1週間ほど前にも近くの保育園の屋根で、ヘリの部品とみられる円筒状の物体が落ちているのが見つかっている。

 CH53は10月にも同県東村の牧草地に不時着、炎上した。2004年に普天間周辺の沖縄国際大に墜落したのも同型ヘリでまさに事故多発機と言える。

 本土復帰から45年で米軍機の部品落下は県が把握しているだけでも約70件に上る。今回米軍は謝罪のコメントを出し、同飛行場所属のCH53の飛行見合わせを表明した。抗議のほとぼりが冷めるのを待っているのだとしたら大きな間違いである。

 翁長知事が全ての米軍機の緊急点検とその間の全面飛行停止を求めたのは、地元としては当然だろう。しかし既に事故当日、山本朋広防衛副大臣が「その考えはない」と予防線を張った。米軍の意向を忖度(そんたく)したのではないかと思えてくる。

 日米両政府とも忘れてならないのは1996年、普天間を5~7年以内に全面返還するとした合意だ。前年の米兵による女児暴行事件で反基地運動が激化する中、日米特別行動委員会(SACO)が出した最終報告に基づくものである。

 安倍晋三首相は名護市辺野古への移設計画の遅れなどを理由に挙げるが、問題をはぐらかしていないか。結局は基地機能の強化にすぎず、沖縄の負担の軽減にはつながらないだろう。

 まずは両政府で普天間の運用停止にめどを付け、その上で県も加えた協議を持ち、沖縄の将来を考えていかねばならない。

 くしくもおとといは普天間所属の輸送機オスプレイが名護市沿岸に「墜落」してから1年だった。この時問題となったのは日米地位協定の「壁」だ。

 関連文書で戦闘機などは米軍の「財産」とされ、日本側の捜査には米軍の同意が要る。今回米軍が普天間に沖縄県警を入れて調査を許したのは、あくまで例外にすぎないのだろう。

 対米追従は航空特別法にもうかがえる。米軍機や国連軍機は、速度や高度などの安全運航を定めた航空法を「適用しない」としている。中国地方などでも米軍機が爆音を響かせ低空飛行を繰り返すのは、この点にあろう。岩国基地は、神奈川・厚木基地からの空母艦載機移転で極東最大級の米軍基地となる。沖縄にとどまらず、さらに幅広い議論が求められる。

(2017年12月15日朝刊掲載)

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