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[イワクニ 地域と米軍基地] 米軍機目撃 最多874件 「移転」で拍車も

 西中国山地の米軍の訓練空域「エリア567」にかかる広島県北広島町で、米軍機とみられる機体の目撃件数が本年度上半期(4~9月)、874件に上ったことが15日、町のまとめで分かった。上半期では過去10年で最多。前年度同期から倍増し、2日に1回のペースで確認されていた。北朝鮮情勢が緊迫化する中、米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転を機に、さらに増える可能性を指摘する専門家もいる。

 目撃したり、飛行音を聞いたりした町職員や住民の情報を集計した。その日数は94日(前年度同期比9日増)で計874件(442件増)。島根県境の芸北地域に集中し、うち八幡地区は654件と7割以上を占めた。同地区では夜の騒音被害も相次ぎ、4月27日には午後8時台に70・0デシベル以上を5回計測。最高は「電車のガード下」に相当する101・2デシベルだった。

 一方、この上半期に計測された騒音回数は前年度同期と同程度だった。目撃件数の大幅増について町危機管理監は「うるさいと感じないまでも飛来に気付くケースが増えた。1回の訓練時間が長くなり、飛行高度も上昇しているのではないか」とみる。

 海上自衛隊呉地方総監を務めた金沢工業大虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は北朝鮮情勢のほか、岩国基地へ1月に配備されたステルス戦闘機F35B10機(現在は16機)の訓練のためと分析する。「北朝鮮情勢がさらに緊迫化すれば訓練も増える。町周辺にも今後、艦載機移転の影響が出る可能性はある」と指摘する。

 国によると、厚木基地(神奈川県)から岩国基地への艦載機移転は今年8月に開始。FA18スーパーホーネット戦闘攻撃機など第2陣約30機が今月1日までに移転を終えた。来年5月ごろまでに計61機の移転が完了するとされ、岩国基地所属機は既存の海兵隊機を含め約120機に倍増する。

 在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)は、海軍の艦載機が海兵隊機と同様に中国山地で訓練するかどうか明らかにしていない。北広島町では10月、岩国基地所属機による火炎弾「フレア」の射出訓練が目撃され、住民から不安の声が出ている。町は「今後、低空飛行訓練や騒音被害が増えないか注視する」としている。(山田太一)

(2017年12月16日朝刊掲載)

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