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原発30キロ圏 重点区域に 山陰5市「実効性は」 国・中電に対処求める

 原子力規制委員会が31日、原子力災害対策重点区域を正式に30キロ圏に拡大したため、中国電力島根原発(松江市鹿島町)周辺では従来の松江市に加え、出雲、雲南、安来の島根県3市と境港、米子の鳥取県2市の計6市が対象エリアとなった。6市は住民の避難計画策定を急ぐが、住民からは計画の実効性への不安も漏れる。

 「まずは近くの中学校に逃げようと家族5人で話している」と話すのは原発から南に約25キロ離れた雲南市大東町の会社員福井恵美さん(48)。一方で「30キロ圏の住民全員が逃げることなんて本当にできるのか」と心配そうな表情を浮かべた。

 6市は福島第1原発事故を受け、昨年5月から島根、鳥取両県と避難計画の策定に着手。30キロ圏の住民約46万人の避難先を両県と広島、岡山県の4県に定めた。だが詳細な地区単位の避難先決定は難航している。

 原子力防災を初めて担う松江市以外の5市。「ノウハウの蓄積がない」(雲南市の斉藤雅孝統括危機管理監)のが実情で、職員を1~4人増やすなど独自に対応する。ただ「1市の努力には限界がある。職員育成は原発を監督する国が責任を持つ必要がある」(安来市の近藤宏樹市長)との声は根強い。

 5市はいずれも中電に対し、立地自治体並みの安全協定締結を求めている。「事故のリスクだけ背負い、運転への発言権がないのは納得できない」と斉藤危機管理監。出雲市の森山靖夫防災安全管理監も電力会社と30キロ圏の自治体との協定締結について「国が義務付けるべきだ」としている。(樋口浩二、川上裕)

(2012年11月1日朝刊掲載)

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