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遺品 無言の証人

活版印刷の魂

  ≪無言の証人・異形の鉛≫2016年に原爆資料館に寄贈された鉛の塊は高さ30センチ余り。なぜか、一升瓶の形をしている。

 爆心地から520メートル、現在の中区堺町にあった中本印刷所。活版印刷の鉛の活字が熱線か猛火で溶け、そばにあった瓶に入り込んで固まったとみられる。

 被爆の翌月ごろに広島に復員した中本勝人さん(当時20歳)が、父が経営していた同社の焼け跡で見つけた。家族や社員の遺骨は、ばらばらで拾えないまま。「死んだ兄や姉、社員たちの魂が固まったものだ」と亡くなるまで大切に守り、由来を語り継いできたという。

 新着資料展で公開されたが学芸員が手に持つと、よろけそうになるほど重い。腹の部分には室内で砕けたものを巻き込んだらしい、ガラス破片も光る。「異形の被爆資料」は核兵器の猛威を静かに告発する。

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