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核禁止条約 発効なるか 今年 50ヵ国の批准焦点 被爆地、環境づくりへ

 2017年7月に国連で制定された核兵器禁止条約は18年、各国による批准が50カ国を超え、発効するかどうかが焦点だ。平和首長会議(会長・松井一実広島市長)や広島の被爆者、市民団体が、条約の周知と締結を求める署名活動を推進。条約に反発する核保有国や、米国の「核の傘」を求める日本政府が、被爆地の声にどう応えるかが問われる年になる。(水川恭輔)

 「署名を通して、全ての国が条約を締結するよう促しましょう!」。首長会議は11月、禁止事項や前文など条約概要を解説し、各国に早期締結を求める首長会議の署名へ協力を呼び掛けるチラシ約2千枚を作成。広島市内の原爆資料館や各区役所で配り始めた。

 各国による条約への署名、批准手続きは17年9月に始まり、同12月8日までに56カ国が署名。うち3カ国が、最終手続きである批准を済ませた。

 「まず早期発効が重要。各国の政治指導者が批准を進めやすい環境をつくりたい」と首長会議事務局の広島平和文化センター(中区)。1月15日は、条約制定に貢献してノーベル平和賞を受けた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のフィン事務局長を迎え、市内で若者との対話集会を開催。条約発効へ機運を高める。

 日本被団協も全ての国に条約締結を迫る「ヒバクシャ国際署名」を提唱中。広島県内では二つの県被団協など被爆者7団体と県生協連などが3月に連絡会を発足させ、運動を強化する。

 日本政府は、段階的な核軍縮を主張する米国と歩調を合わせ、核兵器禁止条約に反対する。17年11月には核軍縮進展の方策を探る目的を掲げ、広島市内で核保有、非保有双方9カ国15人の専門家による「賢人会議」第1回会合を開催。18年3月の次回会合を経て提言を受け、春にある核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第2回準備委員会での提案に生かすという。

 賢人会議の議長によると、保有国や核の傘の下にある国が禁止条約に入る前でも締約国会議へのオブザーバー参加を促す提案が出た。賢人会議の委員で、首長会議の小溝泰義事務総長らは、条約で具体的に定めず、保有国が批判する核廃棄の検証措置や、核兵器の非人道性の議論を深められると期待する。外務省の吉田朋之軍縮不拡散・科学部長は日本のオブザーバー参加を「白紙」と言う。

 賢人会議では、安全保障上の核の役割を減らす「核の先制不使用」など、実現すれば条約推進側に一定の理解が得られうる他の提案もあったという。ただ、北朝鮮の核・ミサイル開発を理由に、米国の核抑止力を不可欠と主張する日本政府に政策転換の姿勢はまだ見られない。

核兵器禁止条約
 核兵器の開発や保有、使用、使用するという威嚇などを全面禁止する初の国際条約。前文で「被爆者」の受け入れ難い苦しみに留意すると明記した。2017年7月7日、国連での交渉会議で122カ国・地域が賛成し、採択された。米国などの核保有国は会議をボイコット。日本は交渉に参加しなかった。50カ国が批准の手続きを終えた後、90日後に発効する。

(2018年1月1日朝刊掲載)

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