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伊方原発30キロ圏内に上関町八島 安全協定めぐり溝

山口県「6月に締結申し入れ」

四国電「正式打診受けてない」

 山口県が四国電力との締結を目指す原子力安全協定の協議が進まない。県は上関町八島の一部が伊方原発(愛媛県伊方町)の30キロ圏に入るため、原発事故に備えた地域防災計画の本年度内の策定を急ぐ。だが、並行して進める四国電力との協定締結は今年5月の二井関成知事(当時)の意向表明後、半年近くがたっても具体的な進展がみえない。(金刺大五)

 二井前知事は5月の会見で「愛媛県と連携しながら協定締結に向けて努力していく」と表明。翌6月に山口県防災危機管理課の担当者が松山市の四国電力原子力本部を訪ね、協定締結を申し入れた。

 異常時の速やかな通報のほか、防災上必要な立ち入り調査、増設など施設変更時の協議などを打診。しかし、その場では四国電力側から前向きな回答はなく、協定に関する協議はその後も進んでいない。

 四国電力広報部は取材に「二井前知事の意向表明は承知している」とした上で、「正式な申し入れは受けていない。具体的に申し入れがあれば、愛媛県や伊方町と相談して対応したい」と回答。協議入りしていないとの認識を示す。

 上関町八島には10月1日現在で38人が暮らす。県は3月、愛媛県と原発事故発生時の連絡や防災対策で連携する確認書を交わした。さらに「より迅速で詳細な情報を得たい」として四国電力との協定の必要性を強調する。

 山口県が地域防災計画を策定すれば、四国電力は防災業務計画の中で県を通報連絡体制に組み込むことになる。ただ、県としては異常事態発生の前兆も含めた情報などを確実に得るため、協定を結びたい意向だ。

 全国的に電力会社は協定を結ぶ自治体の範囲拡大に慎重だ。地元との長い協定の経緯があり、四国電力は「単独では判断できない」とするが、県防災危機管理課は「協定は防災体制を確立する上で必要。粘り強く交渉したい」としている。

(2012年11月3日朝刊掲載)

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