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[イワクニ 地域と米軍基地] 北朝鮮ミサイル・核実験直後急増

米軍機騒音1万8881回 中四国 6年で計測 本社集計

艦載機移転 被害拡大も

 中四国地方にある在日米軍機の訓練空域周辺で、70デシベル以上の騒音(騒々しい街頭に相当)が2017年11月までの約6年間で計1万8881回計測されたことが31日、中国新聞の集計で分かった。多くは米軍岩国基地(岩国市)所属機の訓練や同基地に飛来する戦闘機の影響とみられ、北朝鮮のミサイル発射や核実験の直後に急増していた。厚木基地(神奈川県)の空母艦載機61機の岩国移転に伴い、専門家は騒音被害がさらに増す可能性を指摘する。(久保田剛、明知隼二)

 米軍の訓練空域・ルートは、中国山地の上空には「エリア567」と「ブラウンルート」、四国上空には「オレンジルート」がある。騒音被害を受け、周辺自治体で11年末から騒音測定器を置く動きが拡大。広島、島根、徳島、高知4県の計14市町村にある測定器計29カ所(うち4カ所は国設置)を対象に選び、それぞれの測定開始時からの公表データをまとめた。

 各自治体は70デシベル以上を騒音として記録している。現在の観測態勢がほぼ整った14年以降の騒音回数は、14年4300回▽15年4231回▽16年3974回▽17年2955回(11月まで)―だった。

 騒音回数はやや減少傾向にある一方、北朝鮮のミサイル発射や核実験が相次いだ16年以降、その直後に増加する傾向が明らかになった。17年でみると、中距離弾頭ミサイル発射(8月29日)翌月の9月は449回、10月は486回を記録。それぞれ8月の2・5倍、2・7倍だった。9月には6度目の核実験も実施された。

 エリア567内で訓練が集中的に行われる空域が移動した実態も浮かんだ。浜田市旭町丸原は14年に1005回と最多だったが、その後急減。15年の最多は広島県北広島町西八幡原。1036回と前年の1・5倍になった。同年以降、同町八幡地区に集中している。

 市町村別では、測定地点が5カ所ある北広島町が最多。8436回と全体の半数近くを占めた。100デシベル(電車通過時のガード下に相当)以上は261回あり、最大は益田市匹見総合支所の110・6デシベル。

 岩国基地への艦載機移転は18年5月ごろまでに終わる予定。現在、計画の6割に当たる36機程度が配備された。第2陣のジェット機3部隊(計30機程度)は集計期間後の17年12月1日に移転を完了した。今のところ中国山地での艦載機の訓練は確認されていない。

 在日米軍に詳しいNPO法人ピースデポ(横浜市)の梅林宏道特別顧問(80)は「今後、中国山地で艦載機の訓練が本格化し、騒音被害が増す可能性は大きい。関係自治体は、住民生活を守るため連携を強化すべきだ」と指摘している。

米空母艦載機移転計画
 在日米軍再編の一環で日米両政府が2006年5月に合意。米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地(岩国市)に61機を移す計画で、市や山口県など地元自治体は17年7月、国に容認を伝えた。8月に第1陣のE2D早期警戒機5機が到着。11~12月にFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機2部隊(24機程度)とEA18Gグラウラー電子戦機部隊(6機程度)の計約30機、C2輸送機1機が配備された。18年5月ごろまでに残るスーパーホーネット2部隊(24機程度)が移る予定。移転完了で岩国は約120機を抱える極東最大級の基地になる。

(2018年1月1日朝刊掲載)

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