×

ニュース

ビキニ実験 乗組員追う映画 広島で上映会

 米国のビキニ水爆実験で被曝(ひばく)した漁船の乗組員たちを追ったドキュメンタリー映画「放射線を浴びたX年後」の上映会が、広島市中区のシネツイン本通りであった。伊東英朗監督(52)が1日の上映後に舞台あいさつし、「ビキニ被害の深刻な実態について知ってほしい」と訴えた。

 伊東氏は、1954年のビキニ水爆実験について、第五福竜丸が「死の灰」を浴びて、久保山愛吉さんが亡くなったと考えられているが、「それはごく一部の話だ」と指摘。米エネルギー省のデータによると、「放射性物質はアジア、特に日本でも降った。漁船だけではなく、日本全体が放射線を浴びた巨大な被曝事件だった」と強調した。

 しかも「被曝した乗組員たちは放置され、救済どころか実態の解明もなされていない。(心臓の病気やがんで亡くなった)多くの乗組員は、自分たちの死によって事件を伝えている」と話した。

 昨年起きた福島第1原発事故にも言及。国民の関心が薄れれば、フクシマでも同じようなことが起きるかもしれない。そうならないためにも、「ビキニの被害について知り、伝えてほしい」と来場者に呼び掛けた。

 この映画は、伊東氏が8年前から取材して民放の南海放送(松山市)で作ったドキュメンタリー番組を基に制作。シネツインでは1日までに3回上映され、約200人が見た。(宮崎智三)

(2012年11月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ