×

ニュース

<解説> 「核兵器のない世界」へ 早期に指導力を

■記者 金崎由美(ワシントン発)

 「核兵器のない世界を目標とし、追求する」と明言するオバマ新大統領。経済危機など深刻な国内問題が山積する中、新政権がどれだけ早期に核軍縮に着手し、ほかの核保有国の行動を促せるか。そのリーダーシップに被爆国日本をはじめとする世界が注目している。

 ここワシントンの就任式会場周辺には、20日未明から人々が場所取りなどに訪れた。歴史の「チェンジ」に期待する米国民の熱気に包まれている。

 ブッシュ政権の核政策とは一線を画すオバマ氏は、米上院が否決したままの包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准、米ロの核兵器の劇的な削減-なども明言している。また核拡散防止条約(NPT)体制の強化も掲げる。

 一方でオバマ氏は「核兵器がある限り強力な核抑止力を維持する」とも述べている。いわば条件付きの目標だ。

 ただ間違いなく変化の兆しはある。キッシンジャー氏ら4人の元政府高官が「核兵器のない世界」を新聞紙上で呼びかけたのをきっかけに、米国内では核兵器廃絶の道筋を探る議論が活発になった。

 だからこそ被爆地からの声をいま一度、高める時だ。核兵器は、単に「冷戦後は必要なくなったから」なくすべきなのではない。被害の非人道性、という本質と向き合ってはじめて、国内の核兵器産業や軍の抵抗にもぶれず、一貫した取り組みができるはずだ。

 広島では、オバマ氏の被爆地訪問を求める動きが広がっている。被爆体験に裏打ちされた「核兵器のない世界」への決意を、ヒロシマと共有することが、実現への推進力になる。

(2009年1月21日朝刊掲載)

関連記事
オバマ米新政権 核軍縮へ新指針づくり NPT体制強化へ(09年1月16日)
オバマ氏来訪求め書簡 元原爆資料館長の高橋昭博さん(09年1月15日)
オバマ氏に広島訪問を要請 被爆者7団体(09年1月 8日)

年別アーカイブ