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社説・コラム

社説 米軍ヘリのトラブル続発 政府は当事者能力持て

 年明け早々、沖縄県で米軍ヘリコプターによるトラブルが相次いでいる。6日にはうるま市伊計島に、8日には読谷村の廃棄物処分場にそれぞれ不時着した。宜野湾市の保育園や小学校に米軍ヘリの部品が落下する事故から、わずか1カ月である。異常事態というほかない。

 ヘリはともに普天間飛行場所属で、不時着したのは人家やホテルに近いエリアばかりである。とりわけ伊計島では漁や潮干狩りのできる浜に、墜落かと思うほどの急降下で不時着しており、住民の衝撃は大きい。

 読谷村では米軍側が報道陣を投光器で照らし、撮影を妨害する一幕もあった。地元の神経を逆なでするような行いだ。

 県は防衛省と外務省に対し、沖縄の全米軍機の緊急点検とその間の飛行停止などを強く求めたほか、読谷村議会は原因究明まで普天間所属の全機の訓練中止などを求める抗議決議を全会一致で可決した。島袋俊夫うるま市長や伊計自治会も抗議し、飛行ルートの変更を求めている。当然の憤りだろう。

 ところが、米側は県民に対して誠意を示したようには見えない。また日本側には当事者能力があるようには思えない。

 確かに、マティス米国防長官は小野寺五典防衛相に謝罪し、再発防止や点検整備の徹底を「重要な課題」として取り組む約束をした。ところが、読谷村に不時着したヘリは自力で現場を離陸して再び飛行しているだけでなく、うるま市に不時着したヘリの同型機も飛行が確認されている。原因が究明されるまで同型機の飛行をやめよとの要請は全く無視されている。

 小野寺氏は「(トラブルが)多過ぎる。沖縄の皆さんの心配は当然だ」と記者団に述べたが、言葉だけで県民に寄り添うのではなく、実効性ある安全対策を引き出すことが肝要だ。まずは全米軍機の飛行停止とオーバーホール(分解点検修理)を実行させるしかあるまい。

 見逃せないのは、異なるヘリの機種にまたがって事故やトラブルが頻発していることだろう。沖縄の米軍全体で、機体の老朽化や要員の疲労が起きている可能性が高い。配備されてから時間がたっていない機体なら整備不良も考えられる。

 さらにいえば、朝鮮半島情勢が緊迫するに伴って訓練の密度が濃くなり、より過酷になっているとの推測もできよう。

 うるま市の島袋市長は地元紙の取材に「米軍の整備体制がどの程度か分からないことに住民は不安を抱えている」と答えている。必ずしも基地反対派ではない県民も、日々頭上を飛ぶヘリの整備や老朽化の度合いが分からないまま、事故やトラブルが多発すれば不安が募るのは当然だろう。米軍は納得のゆく説明をほとんどしていない。

 昨年10月には普天間所属の大型輸送ヘリが東村の牧草地に不時着、炎上した。ここもまた人家に近かった。直後に安倍晋三首相は、原因究明と再発防止を米側に任せるのではなく防衛省や自衛隊の知見を最大限に活用するよう指示したはずだ。

 原因究明のためには、在日米軍の権益を保障する日米地位協定の見直しが欠かせない。自民、公明の連立与党は及び腰だが、沖縄県民の安全・安心のために官邸主導で直ちに検討に入るべきではないか。

(2018年1月11日朝刊掲載)

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