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オバマ大統領再選 平和研の水本副所長に聞く 本気問われる核軍縮

対露交渉やCTBT焦点

 オバマ米大統領の再選を受け、オバマ政権が打ち出した核軍縮路線の成果と課題、2期目の展望について、広島市立大広島平和研究所(中区)の水本和実副所長に聞いた。(田中美千子)

 ―オバマ氏の核軍縮をめぐるこれまでの取り組みへの評価を聞かせてください。
 就任直後の2009年4月、チェコ・プラハでの演説で「核なき世界」の追求を宣言し、核軍縮の機運を生みだした。核軍縮や核拡散防止にリーダーシップを発揮しようとする姿勢はうかがえる。例えば、米国が保有する戦略核の数を初めて公表した。

 ただ、演説には「私が生きている間に(実現は)難しい」と現実的な視点も織り込んでいた。実際、この4年間に劇的な核軍縮に成功したわけでもない。

 ―なぜ成功しなかったのでしょうか。
 国内に核軍縮への反対勢力もいる。激しい与野党対立が続く政治環境で、本人の想像以上に妥協せざるを得ない場面が多かったはずだ。

 ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の批准では、議会に承認させるのと引き換えに核関連予算の大幅増を認めた。米露の核軍縮が実現した半面、自国の核兵器を近代化させるための実験続行を決定付けた。

  ―今後の課題は。
 どこまで本気で核軍縮を進めるか、2期目に示さない限りプラハ演説は色あせる。ロシアとのさらなる核軍縮交渉や懸案の包括的核実験禁止条約(CTBT)批准を前進させられるかが焦点。15年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議にも注目したい。

 ―日本政府や被爆地の役割をどう考えますか。
 オバマ氏は多国間の枠組みを軸に核軍縮を進めようとしている。同盟国である日本はNPT再検討会議、ジュネーブ軍縮会議などの場を通し積極的に核軍縮を促したい。オバマ氏は2期目も厳しい議会運営を強いられる。被爆地として米国の市民社会や国際世論に粘り強く核兵器廃絶を求めることが不可欠だ。

みずもと・かずみ
 1957年、広島市中区生まれ。東京大法学部卒。朝日新聞ロサンゼルス支局長などを経て、2010年から広島市立大広島平和研究所副所長。専門は国際政治・国際関係論、核軍縮。

(2012年11月8日朝刊掲載)

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