×

ニュース

露艦救助の史実 絵本に 住民制作 あす記念の集い

イルティッシュ号 日本海海戦で江津に漂着

 日露戦争の日本海海戦で損傷し、漂着したロシア艦イルティッシュ号の乗組員を住民が救出した実話を、江津市和木町の住民たちが絵本にまとめた。「勇気と人間愛にあふれた史実を伝えたい」との思いを込め、20日午後1時半から、パレットごうつ(同市江津町)で出版記念フォーラムを開く。(松本輝)

 1905年5月27日、ロシア・バルチック艦隊特務艦のイルティッシュ号は被弾し、翌28日に和木町沖へ。住民はボートで海岸にたどり着いた200人を超す乗組員を救助し、亡くなった乗組員の慰霊碑を建てた。

 「こっちへこーい こっちへこーい~イルティッシュ号の来た日」と題した絵本では、「あがあな大きな船は見たことなあで」「みんな同じ人間だで、気持ちは一つよのう」などと方言を入れ、住民の気持ちを忠実に表現。乗組員を手当てした様子や交流も描写した。同市在住のイラストレーター、みはしたかこさんが絵を手掛け、ロシア語と英語訳も載せた。

 2016年12月、町まちづくり協議会を中心に、住民や団体で実行委員会を設立。自治総合センターから200万円の助成を受け、地域に残る図書や資料を基に絵本を作った。

 実行委の五十嵐百合子会長(71)=同市江津町=は「今もロシアとの友好が続いているのは、先人が勇気を出して手を差し伸べたおかげ。絵本を契機に、今後も受け継いでいきたい」と話している。

 A4判、32ページで非売品。1800冊制作し、町内の各家庭や市内の小中高校、県内の図書館に配る。

 20日のフォーラムは実行委の主催で、入場無料。絵本の読み聞かせや絵本に原稿を書いた安来市加納美術館の神英雄館長の講演がある。市人権啓発センター☎0855(52)1018。

(2018年1月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ