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社説・コラム

社説 米軍ヘリまた不時着 日米とも本気で対応を

 沖縄県で米軍のヘリコプターがまた不時着した。今年に入って1カ月足らずの間に3回目となる。あまりにも異常な事態である。

 今度は沖縄本島から西へ約60キロの離島、渡名喜島のヘリポートに米軍普天間飛行場(宜野湾市)所属の攻撃ヘリコプターがおととい夜に不時着した。小学校や中学校まで約250メートルしか離れていなかった。けが人がいなかったのが幸いだ。

 だが、同飛行場の所属ヘリは、今月6日にはうるま市伊計島の砂浜に、8日に読谷村の大型ホテル近くに相次いで不時着した。昨年10月には東村の牧草地に不時着して炎上した。部品の落下事故も起きている。

 これだけ事故やトラブルが続くと、機体の点検整備体制に深刻な問題を抱えていると言わざるを得ない。整備が不十分なまま米軍機が日々頭上を飛び交うことなどあってはならない。日米両政府と米軍は、その危険性と本気で向き合い、実効性ある対策を急いで講じるべきだ。

 これまで事故やトラブルが起きるたび、米軍は形ばかりの原因調査を行い、納得のいく説明をしないまま飛行を再開してきた。政府は飛行自粛を求めるものの、米軍側の一方的な「安全」宣言を受け入れ、追認を繰り返している。

 その結果、全く改善が見られない。沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が米軍に「制御不能」、政府には「当事者能力がない」と憤るのも無理はない。  さらに地元の反発を増幅させるような問題も浮上している。

 昨年12月、普天間飛行場に隣接する小学校のグラウンドに大型ヘリの窓が落下する事故が起きた。日米両政府は学校上空の飛行は「最大限可能な限り避ける」というルールに合意した。

 ところが、今月18日に同じ小学校の上空を米軍ヘリが再び飛んでいるのが確認された。事故からわずか1カ月余りで、「約束」が破られた形だ。しかも米軍と在日米大使館は学校上空を飛行した事実すら否定し、日本政府との主張に食い違いが出ている。

 防衛省の監視員が上空飛行を確認し、飛行の様子もカメラで捉えていた。さすがに小野寺五典防衛相も会見で「米側は私どもが求める飛行をしていない」と抗議を表明した。証拠の映像を米側に提供し、改めて事実確認を求めたことも明かした。いつになく強い姿勢で米側に臨んでいる。

 来月4日には普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設計画を争点にした名護市長選があり、今秋には県知事選も控えている。子どもと学校の安全を脅かす問題だけに、県民の怒りは大きい。米側の言いなりになっているように映れば、選挙に影響しかねないとの思惑があるのかもしれない。

 政府は真相をうやむやにしてはならない。このままでは重大な事故が沖縄に限らず、どこで起きてもおかしくない。徹底した原因究明を米側に強く求め、全ての米軍機の安全が確認できるまで飛行を認めないほどの強い姿勢が求められる。

 ただ、主体的な捜査への関与や改善要求の実現には、在日米軍の権益を保障する日米地位協定が妨げになっている。改定もにらみ、抜本的な検討に乗り出すべきではないか。

(2018年1月25日朝刊掲載)

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