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平和公園の旧中島地区 地下遺構展示 計画作り 20年度公開目指す

 広島市中区の平和記念公園地下に残る、原爆で壊滅した旧中島地区の街の遺構の展示公開へ、市は2018年度に整備計画作りに着手する方針を固めた。有識者の意見を聞き、展示に適した遺構の場所などを調査。19年度にも試掘する。被爆者が老いる中、広島の惨禍を伝えるため被爆75年の20年度の公開を目指す。

 米国による原爆投下前、同地区には民家や商店、寺院などが軒を連ねていた。複数の関係者によると、市は往時の暮らしを効果的に伝えられる公園内の場所や遺構の見せ方、劣化を防ぐ管理手法などを専門的な知識を取り入れて検討し、計画にまとめたい考え。18年度当初予算案に関連調査費を計上する方針だ。

 地下の被爆遺構の現状は不明点が多く、試掘の結果を基に整備場所や実施設計を詰める。現地保存・展示手法としては、強化ガラス板を通して地上から地下が見える「横浜税関遺構」(横浜市中区)などを参考にする。公園は国名勝に指定されており、文化庁の許可を得るための協議も進めるとみられる。

 旧中島地区の被爆遺構は、原爆資料館本館の耐震化を前に15年11月~17年3月に実施した本館敷地の発掘調査で地下約70センチから出土。市は公園内の別の場所で、20年を念頭に遺構の公開を検討する考えを示し、元住民や被爆者を含む市民グループが実現を働き掛けていた。市は本年度、横浜税関遺構などを視察した。

 同地区はアニメ映画「この世界の片隅に」(16年11月公開)で描かれ注目が増す。原爆が市街地の民間人の命を無差別に奪った証しとなる遺構の公開で、昨年の核兵器禁止条約制定のてこになった核兵器の非人道性を一層発信できるとの期待もある。(水川恭輔)

(2018年1月27日朝刊掲載)

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