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平和公園の変色パネル3ヵ月も放置 市、改修せず住民ら憤り

 広島市中区の平和記念公園内にある、被爆前の中島本町の様子を伝えるパネルが、激しい変色で読めなくなっているまま、3カ月にわたって放置されている。修学旅行シーズンになっても改修しない市に対し、かつての中島本町の住民や被爆者からは落胆と憤りの声が上がっている。

 パネルはステンレス製で縦60センチ、横90センチ。中島本町の地名の由来や被爆前に暮らしていた世帯を記録した地図、街並みの写真が記されていた。

 現在は日に焼けて大半が茶色になり、読みにくくなっている。9日、修学旅行で訪れた滋賀県の小学6年男子児童(12)は「写真が特に見えづらい」とパネルから離れていった。

 市平和推進課の職員がパネルの傷みを調べたのは8月17日。建て替えの方針を固めたが、手つかずだ。修学旅行生や観光客に、原爆で町が消えた被爆の実態を伝える機会をみすみす逃している。

 建て替え費用は約30万円。同課被爆体験継承担当の石田芳文課長は「危害が及ぶわけではなく、緊急性は高くない。予算が付いていないので時間がかかっている」と説明。早ければ今月中に改修する見通しという。

 「修学旅行生に中島本町のことが伝わらない。傷んだままの姿をさらすのは恥ずかしくもある」。中島本町から中区江波に移った慈仙寺の梶山仙順住職(90)はそう残念がる。

 県被団協の坪井直理事長(87)は「かつての市なら、平和に関する取り組みは最優先で進めていた。近年は優先度が下がってきたのか、実現までに時間がかかり過ぎるように感じる。パネルは最優先で直してほしい」と求めた。(神下慶吾、桑田勇樹)

(2012年11月10日朝刊掲載)

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