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社説・コラム

天風録 『紙齢第44444号』

 既にお気付きの読者がいるかもしれない。小欄のずっと上の方、紙面の折り目をまたいで左上の端にある数字が、ぞろ目に近づいている。来月、平昌冬季五輪の最中に第44444号を迎える▲「紙齢」と呼ぶ新聞用語で、辞書には見当たらない。本紙が創刊した1892年5月5日からの発行号数を表している。日々の紙面をバトンに例えれば、昨日から今日、今日から明日へとつないできたリレーといえる▲前のぞろ目からは30年以上、かかっている。第33333号と第22222号が昭和で、第11111号は大正…。126年前になる明治の創刊から四つの年号をくぐってきた紙面リレーの歳月を思えば、口幅ったい言い方だが込み上げるものがある▲そのバトンはご存じの通り、原爆の惨禍で途絶えかけた。社屋は炎上し、犠牲となった従業員は114人を数える。「紙齢を途切れさせてなるものか」との当時の気迫は、阪神大震災や東日本大震災に見舞われた地方紙とも通じるものがあるだろう▲不吉な数字ともされる4も並べば、「4合(しあ)わせ」と読める。幸せを小脇に生きる今日の春(松本幸四郎、句集「仙翁花(せんのうか)」)。どうか、これからも小脇に新聞を。

(2018年1月30日朝刊掲載)

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