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ヒバクシャ署名 首相不賛同 「抑止力維持の責任ある」

 安倍晋三首相は31日の参院予算委員会で、日本被団協が提唱する「ヒバクシャ国際署名」に賛同しないと表明した。署名が各国に核兵器禁止条約の締結を求めているとして「条約は核抑止力を否定している。北朝鮮の核の脅威がある中、(米国の核)抑止力を維持して国民の命を守り抜く責任がある」と述べた。

 民進党の森本真治氏(参院広島)の質問に答えた。首相は条約について「核廃絶というゴールは同じだがアプローチが違う」とあらためて主張。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の動向を踏まえると、核抑止力は不可欠で条約は支持できないとして、国際署名には応じない考えを示した。

 国際署名は核兵器廃絶に向けた条約の締結を各国に迫ろうと、広島県被団協の坪井直理事長(92)たち国内外の被爆者9人が呼び掛け人となり、2016年4月にスタートした。昨年9月時点で約515万人分が集まっている。国内では、全体の半数を超す976自治体の首長(前職を含む)が賛同している。

 この日の参院予算委では河野太郎外相も「現実の安全保障上の脅威に対処するには米国の抑止力を維持する必要がある。政府の一員は署名できない」と答弁。米国の核兵器保有数が過剰であるとの指摘には「変動する国際環境の中、米国が判断するものだ」と評価を避けた。(田中美千子)

被爆者 落胆と怒り

 安倍晋三首相が、日本被団協提唱の「ヒバクシャ国際署名」に賛同しない考えを示した31日、核兵器廃絶を目指して署名集めを続けている広島の被爆者に、落胆と怒りが広がった。

 「『どこの国の総理か』と問いたい気分よ」。広島市内の街頭で署名活動に立ってきた広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(75)は中区の事務所で肩を落とした。

 署名の呼び掛け人には坪井理事長(92)のほか、昨年12月のノーベル平和賞授賞式で演説したサーロー節子さん(86)=広島市南区出身、カナダ・トロント市=たちも名を連ねる。「ノーベル賞を後押しに国際署名で廃絶のうねりを世界に広げようとしているのに」。核兵器禁止条約へ署名しないばかりか、関連する被爆者の活動にも背を向ける政府にいらだちばかりが募る。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(73)も「被爆者の活動への評価を述べつつ、署名しないのは矛盾だ。納得できない」と憤った。二つの県被団協を含む広島の被爆者7団体は署名集めの強化へ、3月の推進連絡会立ち上げを準備中。「市民の国際署名の輪をさらに広げ、禁止条約そのものへの日本の署名、批准をいち早く実現させたい」と強調した。(水川恭輔)

(2018年2月1日朝刊掲載)

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