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被爆者 「流れに逆行」 日本政府へも怒りの声噴出

 「逆行だ」「許せない」―。トランプ米政権が、「核兵器なき世界」を掲げたオバマ前政権から一転し、新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」で核兵器の役割を拡大する方針を鮮明にしたのを受け、広島の被爆者たちに3日、怒りの声が渦巻いた。(水川恭輔)

 「世界中の核被害者があぜんとしているだろう。付ける薬がない」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(75)のため息は深い。

 NPRは、オバマ氏が広島訪問後に一時検討したとされる核の先制不使用などを否定。広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)は「核兵器への礼賛が感じられ、各国の専門家や市民社会が核軍縮推進へ採用を求めてきた重要施策が明確に否定されている」。昨年、国際社会は核兵器禁止条約を定め、非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))がノーベル平和賞を受けた。核超大国はこうした潮流にあらがっている。

 もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(77)も「核兵器による脅しを続け、各国で共に核兵器をなくそうという姿勢を見せないのは許せない」と憤る。広島市の松井一実市長は「被爆の実相と被爆者の体験を深く理解し、『核兵器のない世界』を目指して誠実に取り組むことを強く希望する」とトランプ氏に被爆地訪問を求めた。

 核抑止力の観点からNPRを評価する日本政府にも批判の矛先は向く。市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表(79)は「被爆国として米国に考え直すべきだと言うべきだ。このまま米国をかばえば核戦争の危機に巻き込まれるだけだ」。政府の政策転換へ、国民の関心が高まることを願った。

(2018年2月4日朝刊掲載)

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