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オバマ米政権始動 「核廃絶」被爆地に希望

■記者 森田裕美、水川恭輔、岡田浩平

 全世界が注目した就任演説でオバマ米大統領は表明した。「核の脅威を減らすために絶えず努力」「平和の時代をもたらす役割を果たす」。被爆者団体や広島市民には21日、核超大国の変化への期待が高まった。

 広島県被団協の坪井直理事長は未明まで起きて演説を聞いた。「ブッシュ政権と異なり、対話や協調を重んじる姿勢が伝わった。短い演説で多少でも核問題に触れたのは、真剣に考えている証拠」と感動していた。

 「時間はかかるだろうが確実に廃絶を進めてほしい」ともう1つの県被団協の金子一士理事長。両被団協などを含む被爆者7団体は、近く広島訪問を求める手紙を送る。

 日本被団協(東京)の田中煕巳(てるみ)事務局長も、期待感を高めていた。「核の脅威を減らす」の文言を「米国を含め核保有5カ国も減らすことを意味した」と受け止めたからだ。「被爆者に会えばその意も強くできる」。大使館を通じて、面会を求める文書を送る予定だ。

 オバマ大統領は就任前に「核兵器廃絶を米核政策の中心要素とする」「新たな核兵器製造は認めない」との考えを示し、包括的核実験禁止条約(CTBT)早期批准などを掲げてきた。秋葉忠利広島市長は「核政策が好転することへの期待がより大きくなった」とコメントした。

 ただ、就任演説では核兵器廃絶への具体的な政策は示さなかった。「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表は「過大な期待はできないが、選挙中から明言してきた核軍縮施策を進めるのは世界に対する責任」と指摘した。

 平和記念公園(中区)では、今以上に平和発信を強めたいという声が上がった。3万人以上の観光客を案内してきた元高校英語教員三登浩成さん(63)は「大統領の決意を後押しするためにも被爆の実相を伝える活動に力を尽くしたい」。原爆資料館ボランティアの辻靖司さん(66)も「いつか私が大統領に英語で案内する日が来れば」と目を輝かせた。

 共同通信記者時代にオバマ氏を取材した大島寛広島修道大教授は「国家の枠組みを超え、市民から大統領の心に働きかけるアピールができれば被爆地訪問の可能性はある」と分析した。

(2009年1月22日朝刊掲載)

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