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被爆死の米兵捕虜研究 森さん 5月に初訪米へ 米国人監督ら ネットで旅費募る

 被爆死した米兵捕虜を研究し、2016年に広島を訪れたオバマ米大統領(当時)と対面した広島市西区の被爆者、森重昭さん(80)が5月下旬から初訪米する計画が固まった。森さんと米兵捕虜らのドキュメンタリー映画を製作したバリー・フレシェット監督(47)たちがクラウドファンディングで旅費を世界中から募っている。(金崎由美)

 森さんは妻の佳代子さん(74)と約2週間にわたり、米国に滞在予定。5月28日の「戦没将兵追悼記念日」にはマサチューセッツ州ローウェル市内にある被爆死した米兵の慰霊碑を訪れ、遺族らと交流する。フレシェットさんの監督作品「ペーパー・ランタン(灯籠流し)」の上映会にも、ボストンなどで参加する。

 森さんは国際通話や郵便の料金に私財を投じ、米兵捕虜の足取りや遺族の所在を調査してきた。だが腰を痛め、足も自由が利かなくなったため米国に行ったことはなかった。渡米に踏み切る決意をしたのはフレシェット監督の提案からだ。

 ローウェル市出身の監督は1945年7月に呉沖で搭乗機が撃墜されて捕虜となり、広島で拘留中に被爆死したノーマン・ブリセットさんが実家近くに住んでいたことから、この問題に関心を持った。「原爆がもたらす痛みは同じ」と遺族と文通する森さんを知り、広島入りして撮影。オバマ氏の広島訪問を前に完成した映画は、日米で高く評価されている。

 募金サイト「GoFundMe」で2万ドル(約213万円)を目指して寄付を呼び掛け、これまでに約半額が集まっている。森さんがオバマ氏と面会した反響もあって賛同が広がっており、目標額に届かなくても招待を実現させるという。

 米大統領は「核兵器なき世界」を唱えたオバマ氏から核戦力強化を掲げるトランプ氏に交代した。「こんな時こそ森さんを通じて、ごく普通の人が原爆で命を奪われた事実を共に考えたい」と監督は期待する。森さんも「この機を逃さず、広島で起こったことを直接伝えたい」と語る。

募金サイトはこちらから

(2018年2月28日朝刊掲載)

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