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在外被爆者 遺族敗訴 広島・大阪地裁 賠償請求権が消滅

 広島市で被爆後に韓国や台湾に渡った男女5人が長年、被爆者援護法の適用外とされたのは違法として、遺族が国に損害賠償を求めた訴訟2件の判決で、広島地裁と大阪地裁は28日、いずれも請求を棄却した。死後20年で損害賠償の請求権が消滅する民法上の「除斥期間」が過ぎていたと判断した。

 訴えによると、女性は広島で被爆後に台湾に移住し、1994年に亡くなった。広島地裁の小西洋裁判長は、死亡から20年以上たった2015年9月に提訴され、「請求権が既に消滅している」との国の主張を追認。旧厚生省の通達で在外被爆者は74年から03年まで健康管理手当の支給などの対象外で請求は困難だったとする原告側の主張について、「請求権の行使が客観的に不可能であったとは認められない」と指摘し、除斥期間の適用が制限される「著しく正義・公平の理念に反するとまでは評価できない」とした。

 07年、旧厚生省の通達を違法とした最高裁判決が確定。同種の集団訴訟は広島の他に大阪、長崎でも起こされ、国は約6千人と和解した。中には除斥期間を経過した約170人も含まれていた。しかし、16年9月以降、約600人については除斥期間を過ぎたとして和解に応じない方針に転換。1月の大阪地裁判決でも国の主張が認められ、遺族151人が敗訴している。

 判決後に広島市中区であった報告会で、在間秀和弁護団長は「台湾から国の責任を追及するのは困難で、その点を配慮すべきだ」と憤った。控訴を検討するという。国は「主張が認められたものと承知している」としている。(渡部公揮)

(2018年3月1日朝刊掲載)

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